火力のさらなる運用効率向上へ 最先端デジタル技術を導入

2020年8月6日

【東北電力】

火力発電は電力需要への供給力としてだけでなく、昼夜間や季節間による需要変動への対応や、天候に左右される風力や太陽光発電を最大限活用するための調整力としての役割も担う重要な電源だ。
東北電力は、従来からの安定供給の取り組みに加え、火力発電の運用の高度化や効率化に向け、AIやIoTといった最先端デジタル技術を活用した取り組みを加速している。

全火力へ新システム導入 外販による事業創出も

同社は2017年より東芝エネルギーシステムズと共同で、火力発電の運用効率のさらなる向上を目的に、最先端のデジタル技術の導入に向けた検証を行ってきた。こうした検証を踏まえ「設備の異常兆候を早期に検知するシステム」と「運転条件の変更による熱効率向上システム」を、20年3月までに同社が持つ全火力発電所へ導入。運用を開始した。

「高度な設備監視サービス」を提供する

「異常検知システム」は、ビッグデータの分析技術を活用し、重大なトラブルを未然に回避することが目的。過去の膨大な運転データから、通常運転時にあるべき運転データを算出する。算出した運転データと実際のデータを比較し、その差が大きくなった場合は何らかの異常兆候があると認識し、警報を発する。データ差が一定の閾値に達した際に発報する従来手法に比べ、早期の検知が可能となる。また、経験したことのない未知の異常の発見も可能だ。 

「熱効率向上システム」は、過去の熱効率が良好な時の運転データ(基準値)と現在の運転データ(運転実績)を比較することで、温度や圧力の違い、部品の劣化といった熱効率が低下する要因を特定する。その上で、燃料や空気、水の投入量などの運転条件の調整や、劣化した部位の補修などを行い、熱効率の維持・向上を図る。

同社は、「異常検知システム」について、より汎用性を高めた「高度な設備監視サービス」として、製造業を中心とした顧客などに提案する方針だ。21年ごろまでの事業化に向け、準備を進めている。
東北電力は、「東北電力グループ中長期ビジョン」のもと、電力供給事業において競争力を徹底的に強化するとともに、東北電力グループだからできる顧客への新たな価値の提供を通じ、スマート社会の実現に向け取り組んでいく考えだ。