【四国電力 長井社長】エネルギー情勢混迷の中 リスクマネジメント強化で 電力安定供給を維持する

2022年6月1日

昨年3月に「よんでんグループ中期経営計画2025」を公表。電気事業と電気事業以外を両輪としてグループ全体で経営基盤を強化し、脱炭素社会の実現に取り組む。

【インタビュー:長井啓介/四国電力社長】

志賀 ロシア軍のウクライナ侵攻は日本人に大きな衝撃を与えました。同時に、石油・ガス・石炭など化石燃料の世界的な価格高騰で、わが国のエネルギー供給システムがいかに脆弱かが示されました。海外依存度の高い国でありながら、大規模な紛争に巻き込まれないことを前提としたエネルギー政策を取っていたと思います。

長井 そうですね。エネルギー資源の乏しいわが国において、エネルギー政策の大前提は、「S+3E」です。ウクライナ情勢の緊迫した状況が続く中、まずはエネルギーセキュリティの確保、電力の安定供給を第一に考えることが、国民生活や経済活動を維持していくうえで何よりも重要であると痛感しました。
 エネルギー需給を見ると、昨今のコロナ禍からの経済回復などにより需要が堅調に推移しています。一方、脱炭素化に伴い、石炭をはじめとする新規の資源開発投資の停滞によって供給が制約を受け、世界的に燃料需給のタイト化が進んでいました。そこにウクライナ情勢の緊迫化が重なったという認識です。

志賀 今後の化石燃料価格の動向についてどう考えていますか。

長井 価格の高騰は当社の経営への影響が極めて大きく、対ロシア経済制裁に伴う価格影響を含め、その動向を緊張感を持って注視しているところです。

志賀 燃料調達にロシアへの制裁などの影響はありましたか。

長井 石油とLNGはロシアからの調達はなく、石炭は一部をロシアより調達していましたが、足元で他国からのソースに振り替える対応をしており、当面の必要量確保に大きな問題はありません。
 しかしながら、世界のエネルギー情勢は、時々刻々と変化しており、現時点で将来どのような影響が出てくるのか正確に見通すことは困難です。当社としては、在庫を多く残した運用や早めの配船手配などリスクマネジメントの一層の強化を行い、燃料確保を最優先に対応することで、安定的な電力供給を維持していきます。

志賀 ウクライナ侵攻は、今までの世界のエネルギー地図を一変させたと思います。その中で、これからのエネルギー政策はどうあるべきでしょうか。

長井 昨今の国内外の情勢を踏まえた今後のエネルギー政策については、①安定供給と脱炭素化に不可欠な原子力発電の必要性を明確に発信すること、②再生可能エネルギー電源のさらなる導入拡大に際し、施策の優先度や実施スケジュールに留意すること、③足元で重要な供給力・調整力を担っている既設火力発電所の維持・活用に十分な目配りをすること―などが重要です。安定供給の確保と脱炭素社会の実現の両立を目指す観点から、より高い次元でバランスの取れた政策が求められていると考えています。
 将来的に脱炭素社会の実現を目指す国際社会の潮流に変わりはないでしょうが、電力の安定供給なくして、その実現はおぼつかないと思っています。

ながい・けいすけ 1981年京大大学院工学研究科修了、四国電力入社。2015年常務取締役総合企画室長、17年取締役副社長総合企画室長などを経て19年6月から現職。

1 2 3 4