【コラム/8月17日】混乱深めるコロナ対策

2020年8月19日

新井光雄/ジャーナリスト

屋上屋となる。それを承知でいいたいことあり、そんな感じで目下のコロナ混乱を眺めている。余りの迷走にどこにどんな問題が潜んでいるのか、一市民には到底、分からない。いろいろあるが、どうもまず司令塔がないことがあるのではないか。安倍首相の雲隠れだ。確か四十日以上、正式な記者会見を避けている。国会も閉会中でない。どこか変ではないか。野党が臨時国会を要求しているが、自民党、公明党の議員からも要求あってしかるべきだろう。党拘束があるのかもしれないが、こうした問題は賛否あって当然であり、議員の自由が認められるべきだ。

たとえば異常とも思えるPCR検査の少なさはどうだ。首相は日に三万の能力などと簡単にいうが能力を口先で言うことと実施することには大きな開きがある。諸外国と比較してみよう。恐ろしいほどの少なさである。しかし、その理由が判然としない。検査増・医療崩壊という図式が背景にあるというが、これでは隠れた罹患者が増えるだけでないのか。その能力がないと素直に認めるべきではないのか。

とにかく事実が分からないのだ。この分からなさのなかでマスク問題。笑いもので終わったアベノマスクと思っていたら第二弾があった。どうやら変更になったらしいが、当初は8000万枚が医療関係などに配布される計画。それも医療用ではないマスクらしい。加えてすでに随意契約済だったそうだ。これって一体なんだ。あるコメンテーターが愚作という厳しい言葉で批判したが、そういわざるを得ない。政府は正常に機能しているのか。マスクをしている閣僚の顔写真をテレビで放映していたが、アベノマスクをしていたのは安倍首相だけ。それが八月になって止めた。こうなると笑い話しに近い。言い過ぎを承知で恥をしれと言い。

旅行に行こう計画も同様だ。落ち着いてからが前倒しに。そして東京除外。こんなに迷走しては混乱するばかり。やはり司令塔の問題だ。付録で表面化した都知事と官房長官の確執など、みっともないこと限りない。

ここで集約して個人として最も分からない点はやはりPCRの検査の少なさ。あきれるばかりだが、合理的な説明がほとんどない。出来ないのか、やらないのか、やれるがやらないのか、やる気がないのか、はっきりして欲しい。こんな分からない状況に置かれたままは御免だ。真実に直面したい。出来ないなら結構ではないが、それが前提になる。かかりつけの医者は自分に出来ることはないので、「ご自分で対策を」という。これもう一種の医療崩壊ではないか。

【プロフィール】 元読売新聞・編集委員。 エネルギー問題を専門的に担当。 現在、地球産業文化研究所・理事 日本エネルギー経済研究所・特別研究員、総合資源エネルギー調査会・臨時委員、原子力委員会・専門委員などを務めた。 著書に「エネルギーが危ない」(中央公論新社)など。 東大文卒。栃木県日光市生まれ。