ビジネス見据えたVPP実証 多様な事業者と需要家が参画

2020年9月4日

こうした各社の取り組みは、これまで電力会社の「供給側」だけで責任を果たしてきた電力の安定供給を、需要側や、それを結び付けるアグリゲーターなど多様なプレイヤーを巻き込みながら安定供給の責務を果たしながら、ビジネスに変えていくための試金石とする動きである。

中部電力が取り組むVPP実証図

そうした中、ヒートポンプ給湯機にも注目が集まっている。九州電力では、18年度から電気自動車を電力の需給バランス調整に活用するための実証を行っていたが、今年度の実証からはヒートポンプ給湯機も新たにラインアップした。電力各社もリソースとして活用し始めている。とりわけ大きな期待を寄せられているのが、ヒートポンプ給湯の代表格である家庭用エコキュートだ。

エコキュートの役割 既存設備の有効活用へ

エコキュートは、2000年ごろから電力会社が普及を進めてきた。当時は割安な夜間電力を活用しながら蓄熱して貯湯槽にお湯をため、そのまま給湯に利用していた。電力会社のオール電化戦略とも相まって、「給湯革命」の旗手として給湯市場を席捲してきた。環境負荷の小さいCO2を冷媒として使用していることから、ほかの冷媒に比べて地球温暖化係数が圧倒的に低い、いわば環境に優しい給湯器である。

そして、VPPのエネルギーリソースアイテムとして期待される理由が、その普及規模である。わずか20年足らずの間に、累計で700万台というボリュームのエコキュートが国内で普及してきた。およそ5000万世帯という国内世帯数を鑑みると、この割合は実に高い。これまで順調に本体価格も低下してきており、今後も普及していくことが予想されている。

重要なのは、エコキュート設備が既に存在しており、仮に500万台分がVPP指令に応じたとすると、その効果は700万kW分にも及ぶ、ということだ。設備の仕様改造など課題はあるものの、エコキュートの新たな役割として期待が持たれている。

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