「上結東水力発電所」が運転開始 砂防ダムの機能生かし地下に建設

2020年9月14日

【関電工】

関電工は今年5月、再生可能エネルギー発電事業の一環として、新潟県中魚沼郡津南町に建設していた「上結東水力発電所」の運転を開始した。

自然豊かな上結東水力発電所

上結東水力発電所は、信濃川水系中津川中流に位置し、最大出力は990kW、年間発電量は約650万kW時となる。これは一般家庭1200世帯分の年間消費電力量に相当し、CO2削減量は約3000tになる見込みだ。

発電された電気は20年間、FITによって、東北電力に売電する。売電収入は、年間1億8000万円程度が見込まれる。

最大の特長は、1961年に国土交通省が建設した上結東砂防堰堤の有効落差を活用していることだ。同種の水力発電所としては、国内最大級の規模となる。

「既設の砂防ダムの左岸直近の地下岩盤内に、40mほどの立坑を掘って、流れ込み式の発電所を建設しました。設備のほとんどが地下にあるので、掘削時に砂防ダムに影響を与えないよう、制御発破工法を選ぶなど、細心の注意を払いました」と、戦略技術開発本部の野本健司常務執行役員戦略事業ユニット長は説明する。

発電所の運用は、基本的には無人の遠隔監視。問題が発生した時には即座に発電所を停止し、現地に駆け付ける体制も整えている。

砂防堰堤を最大限利用 地下設備で環境にも配慮

関電工は、2011年に基本設計を開始。企画・設計・現地調査を行うとともに、前田建設工業や電力中央研究所と共同で、さまざまな実験や検討を重ねてきた。また、発電所完成後の運営管理も担っている。

未利用だった、砂防ダム放水時の水流を発電に有効活用するのが本発電所の強みだ。

「発電所の放水路として、約60年前に行われた砂防ダム建設時の仮排水路を再利用しているので、減水区間も短くできました」(野本ユニット長)

通常、小水力発電の発電方式は、有効落差を取るために水路を引く「水路式発電方式」が多い。しかしこの発電方式だと、水量が減る減水区間が少なくとも1~2㎞は発生してしまう。その点、上結東水力発電所には、減水区間が120mしかなく、河川環境への影響は少なくなる上、景観にも優しい設計となっている。

関電工は今後も、技術ノウハウの蓄積を生かし、再エネを利用した開発を、地域の自然環境や社会環境に配慮しながら行い、エネルギー自給率の向上や地球温暖化対策に貢献していく。