ネット接続する高機能品が続々登場 気象予報や見守りツールに進化

2020年9月15日

【ガス警報器のスマート化】

万が一のガス漏れに備えて取り付けるガス警報器。しかし、多くは一度も動作せずに交換時期を迎える。最近、家庭内でお役立ちツールと変貌した警報器の発表が相次いでいる。その鍵を握るのがネット接続だ。

「ガスをつけたつもり」「ガス栓を閉めたつもり」などのミスが原因で発生するガス漏れ事故。その防止策として、警報器の設置はとても有効だ。しかし、リース料を払って設置しながら、一度も動作しないまま5年の交換時期を迎えるため、必要性を疑問視する声もある。そこで、ガス事業者や警報器メーカーなどが取り組んでいるのがガス警報器のスマート化だ。インターネットと接続することで、新たな付加価値を生み出した製品が次々と登場している。

大阪ガスのツナガルde警報器「スマぴこ」

自治体などと提携 警報器が情報発信

大阪ガスは、新たなガス警報器「スマぴこ」の販売を開始した。インターネット通信、人感検知センサー、温湿度検知センサーを搭載することで、利用者にさまざまな便利な情報を提供するのが特徴だ。

グループ会社・大阪ガスマーケティングの商品技術開発部スマート技術開発チーム松村圭祐係長は「単機能だったガス警報器にネット接続や複数のセンサーを搭載したことで、飛躍的に多機能な製品になりました」と話す。

具体的には、ガス漏れや一酸化炭素検知といった従来の警報機能に加え、気象情報、防犯情報、雨雲情報、天気予報、熱中症注意喚起、乾燥注意喚起などを、インターネットを介し、ストリーミング再生で情報が提供される。

災害・防犯情報の提供においては、大阪市と大阪府警察と協定を結んだ。自治体も防災における情報周知を課題としていた。例えば、台風や集中豪雨が発生したとき、警報などを発令されて地域の防災無線で周知しても、多くの世帯では雨戸や窓を閉め切りにしている。このため、放送があることは分かっても内容を十分理解するのが困難だった。販売を担当する同社販売企画部販売企画チームの増田健人氏は「スマぴこが宅内にあると、災害情報をしっかり聞き取ることができます。その点を評価していただきました」と説明する。

さらに、人感センサーを活用した機能では、子どもの帰宅や高齢者の在宅状況の把握のため、外出先の家族にメールで伝える見守り通知のほか、設定した時間や人感センサーが検知したタイミングで『今日はゴミの日です。ゴミを集めましょう』などと知らせるリマインダーなどもある。

販売では、特定層への提案に特化するのではなく幅広い層に対して提案していく。「多くのお客さまに利便性を感じてもらえるようにさまざまなサービスを用意しています。5年ごとの警報器の交換時期や、ほかのガス機器の販売時に合わせて、丁寧に説明していきたいです」と増田氏は話す。

快適ウォッチ「SMARTXW-735」と連携するコネクトセンサー

リース料金は月額547円。通常よりも200円程度、高くなるが、使用者からの反応は上々とのことだ。

警報器での情報通知 スマートホームの足掛かり

新コスモス電機は、通信モジュールを搭載し、スマートホームサービスに対応した新世代のガス警報器「快適ウォッチSMART XW-735」を、ソフトバンク傘下のエンコアードと共同開発。東邦ガスと西部ガスを通じて販売を開始した。エンコアードが持つ、最新の通信ソリューションやAIエッジコンピューティング技術を内蔵したオールインワンサービス「コネクト」をガス警報器向けにカスタマイズ。警報器とマルチセンサーを連携させ、警報器の基本機能であるガス漏れや一酸化炭素発生を検知し知らせるのに加え、①温湿度センサーによる熱中症になりやすい環境や空気の乾燥、②不在の時間帯の玄関や窓の開閉(簡易セキュリティ)、③設定した時間帯にドアの開閉が一定時間以上ない(高齢者見守り)、④子どもの帰宅―などをスマートフォンアプリを通じてプッシュ通知できるようにした。 

警報器は5年で交換期を迎える。東邦ガスと西部ガスエリアの年間の買い替え需要は約10万台で、こうした買い替えを機に高機能化したガス警報器の導入を促し、スマートホームを今後のガス警報器のスタンダードの一つとしていきたい考えだ。

新コスモス電機の山田芳穂広報室長は「都市ガスエリアのガス警報器の普及率は40%ですが、ガス器具が進化したこともあり、警報器が一度も動作しないまま交換期を迎えることがほとんど。一方で、事故が起きた場合、多くのケースで警報器が付いていませんでした。機能を追加し、プラスアルファの価値を提供することで警報器の活用の幅を広げ、さらなる普及を進めていきたいです」と話す。

エンコアード側にも、ガス警報器を通じてスマートホームを普及させたいとの狙いがある。事業推進本部電気・ガスサービス開発二部の谷口顕則部長は、「既存の電気やガスなどの生活領域から提案することで、これまでスマートホームに興味がなかった幅広い層へのアプローチができます」と期待を寄せる。

LPガスでも動きがある。岩谷産業は独自のIoTプラットフォーム「イワタニゲートウェイ」の関連機器を開発して、2020年度から量産化を目指す。警報器に通信機能を付加することで、高齢者の見守りサービスや健康管理などを展開する。年内をめどに島根県大田市で事業検証を行い事業化する計画だ。 警報器と通信の融合は、見守りなど新たなサービスを生み出している。しかしこれにとどまらず、より利便性の高いサービスの創出が望めそうだ。今後も警報器の動向が見逃せない。