難しい運転と建設の両立 コロナ感染症対策を徹底

2020年10月4日

【発電所編/中国電力】

中国電力の三隅発電所(島根県浜田市)は同社最大の石炭火力発電所だ。国内トップクラスの電源競争力を目指し、1号機(100万kW)の安定運転とともに、2号機(100万kW)の確実な建設工事の推進を指針として掲げている。

三隅発電所の全景

発電所内の対策に万全期す 中央制御室の入室も制限

2号機の建設は2018年7月から敷地整備などの準備工事を開始し、同11月に本体工事を着工した。現在、ボイラー設備では、ボイラー耐圧部の組み立て工事、タービン建屋では脱気器や給水加熱器など補機の据え付けを実施するとともに、配管工事や発電機・蒸気タービンの搬入・据え付けに向けた準備工事を行っている。

バイオマス混焼にも積極的に取り組んでおり、新たに貯蔵設備を建設中だ。22年4月からの総合試運転を経て、22年11月の営業運転開始を目指す。

建設工事では、限られた敷地を効率的に運用することが工事を円滑に進捗する上で重要になることから、資機材のジャストインタイム搬入や、それを可能とするための配船調整に取り組んでいる。

1号機と2号機合わせて、出力は200万㎾になる

そのような状況の中、コロナ禍によって懸念されるのが、①資機材の納入遅延などによる建設工程への影響、②同社社員や工事請負会社作業員の感染症発生による建設工事の中断および長期化―などだ。

①では、海外からの資機材の調達遅れが懸念されたが、製品納入時期と現地における工事日程の調整、海外での設計業務を国内にシフトするなどの対策により、建設工事への影響は生じていない。
②では、構内の請負会社も含め、国が策定した業種別の感染拡大予防ガイドライン、中国電力の感染予防対策に加え、建設に関連する会社で定めた感染予防対策を踏まえた取り組みを実施中だ。新規入構者については、入構前2週間の健康状態を確認するほか、宿泊場所や通勤手段の把握なども徹底している。

河本修一所長兼建設所長は「三隅発電所では新型コロナウイルスの感染防止に全力を上げて取り組んでいます。勤務中のマスクの着用、発熱やせきなどの体調不良がないかの確認を徹底するなどの対策に加え、中央制御室など重要な箇所への入室は、真に必要な業務以外は禁止するとともに、入室時の手指消毒や運転員との離隔距離を対面2m確保するなどの対策を講じています。また、見学の受け入れも中止しました」と話す。

そのほかにも接触機会を低減するためにウェブ会議の活用、執務室への入室制限、食堂の時差利用などの対策を実施している。

産炭地の状況を把握 船舶受け入れも注意を払う

1号機の運用においては、前述のコロナ対策に加え、燃料調達への配慮も欠かせない。三隅発電所では、燃料とする石炭をオーストラリアから約4割、インドネシアから約3割、そのほかをロシア、米国、カナダ、南アフリカから調達している。「幸い、現在までにこれらの産炭地でコロナによる深刻な生産・出荷不調は発生していません。引き続き輸出国側の状況は注視していきます」(河本所長)

そうした中にあって、石炭船でのコロナ対策でも、船舶の受け入れ、揚荷役に際し、船員の体調確認、陸側からの訪船者(水先人、代理店、荷役作業員など)の検温および本船居住区への立ち入り制限、マスクの着用、船内のアルコール消毒の徹底、ソーシャルディスタンシングの確保などの対策を取っている。

また、コロナ禍において、石炭船だけでなく、全ての国際船舶で船員確保が課題となっている。国際労働機関(ILO)の海事労働条約や積地・揚地各国の規制にて、船員の連続乗船は最長1年程度とのルールがあるところ、国際線フライトの停止や各国の移動制限などにより、円滑な交代が困難な状況が続く。

「三隅発電所では、新たに交代乗船する船員は、日本国内へ入国する際のPCR検査結果や体調を確認の上、入管や検疫所の指示に基づき、陸側との接触を極力避けながら交代を行っています」と、河本所長は対策について説明する。

現在、1号機の安定運転も、2号機の建設も順調に進んでいる。河本所長は「1号機の安全・安定運転を継続しながら、2号機の建設工事を進めることは大変難しい作業です。これに加えて新型コロナウイルス感染症への対策が必要となりました。困難を極めますが、一人ひとりが三隅発電所を支えているという自負と全ての人が持ち場で輝けるよう、やりがい・達成感を持ちつつ、気を引き締めて作業を進め、22年の運転開始を迎えたい」構えだ。

運開への意欲を見せる河本所長