日立基地2号タンク建設が佳境 茨城幹線整備で関東ループ化へ

2020年10月4日

【東京ガス、東京ガスエンジニアリングソリューションズ】

北関東への都市ガス供給能力拡大の拠点となる東京ガスの日立基地で、2号タンク建設工事が佳境を迎えている。同時に手掛ける茨城幹線ができた暁には、関東広域のループ化が完成し、供給安定性が一層増す見込みだ。

茨城県日立市のJR常磐線大甕駅から車を20分ほど走らせると、日立港区にある東京ガスの日立LNG基地に到着する。近づくと、地上式LNGタンクが2基そびえている。うち1基は、日立市の花である桜のペイントを施した屋根が印象的だ。

建設中の2号タンク
1号タンク屋根には桜のペイントが施されている

2016年3月に供給を開始した日立LNG基地は、東ガスが東京湾外に初めて建設した基地。その意義について、東ガスの久野泰志・日立LNG基地建設部長は「供給安定性の向上と天然ガスの需要増加に対応するためには新たな製造・供給拠点が必要だと判断し、基地建設を決定。さらに東京湾内に集中するLNG船の分散化を図る、といった意義もあります」と説明する。19年はLNG船が19隻入港し、110万tのLNGを受け入れたという。

約14万㎡と比較的コンパクトな敷地内では、現在、世界最大規模の23万㎘タンク1基が稼働している。北関東は都市ガス需要が点在しているため、ローリーでの出荷も多い。効率的に出荷できるよう、普通の基地ではLNGの重量を計る台貫をレーンと別に設置しているが、日立基地では全てのレーンに台貫を設置している。

そして、近隣でコベルコパワー真岡発電所が運開したことを機に、さらなる需要増を見込み、2基目のタンク建設に18年4月から着手した。20年度末の稼働を目指し、現在工事は佳境を迎えている。

二つの新工法を積極採用 工期を7カ月短縮

タンク建設は、東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)が担う。2号タンクは、1号タンクと同規模の容量で、国内2例目のエレベーターを本設するタンクになるという。その建設工事では、二つの最新工法を積極的に取り入れている。

一つ目は、IHIが開発した「JCMⓇ(ジャッキ・クライミング・メソッド)」だ。東ガスの基地で初めて採用する工法で、国内でもまだ5例目だという。

従来の工法では、外側の防液堤の土木工事が終わらなければ、その次の内槽の機械工事に進めなかった。これに対してJCMⓇのコンセプトは、防液堤の構築と内槽工事を完全に分離し、同時並行の作業を可能にするというもの。工期の大幅短縮だけでなく、タンク内外の工事が互いに干渉しなくなることで、上下での作業時の危険を回避できるようになった。

機械工事は、工事が終わったブロックをジャッキで引き上げ、次のブロックの作業へ、といった流れで進める。そのため、作業位置は地上5m程度の比較的低所に固定。工事が進むほど作業場所が上昇し、高所での作業が発生していた従来に比べて、安全性や作業効率が格段に向上したという。

屋根の設置の仕方も従来とは異なる。工事終盤に空気圧で押し上げるのではなく、内槽工事の進捗に合わせて徐々に引き上げていくのだ。近隣住民が工事を見守っていたら、まるでタンクがにょきにょき育っているように映るそうだ。

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