熱供給プラントで進む先進技術導入 遠隔監視・操作で設備運用の高度化

2020年10月4日

【東京都市サービス】

安定供給が使命なのは、発電所やLNG基地の運用だけではない。地域冷暖房プラントという大型設備を運用する事業者も同じだ。

新型コロナウイルスの感染防止のため、エネルギーを含む多くの業界で人が密集した空間をつくらないことが求められている。その解決策として、現場の省人化や省力化につながる遠隔監視・操作などのシステム導入は、有効な手段だ。首都圏19カ所で熱供給事業を展開する東京都市サービスも例外ではない。

一部では無人プラントも 運用の高度化に向け前進

同社は銀座2・3丁目地区を皮切りに、昨今の感染症対策より30年以上先駆けて中央監視装置を利用し、無人プラント設備の遠隔監視を行ってきた。しかし、当時の中央監視装置は、設備を監視する限定的な機能しか持ち合わせていなかった。

「IT技術の進歩・普及によって、より高度な遠隔監視が可能になりました」。エリアサービス事業部東京第2支店長の菊地昇次執行役員は説明する。2000年代に入り新規プラント建設や設備の更新時に汎用パソコンとウェブ回線を使った中央監視装置への更新を図り、設備の遠隔監視に加え、遠隔操作も可能になるようシステムを構築してきた。

同社はそれらの条件整備と並行して、各熱供給プラントをエリアごとの近接性などを考慮した五つのグループに分け、親プラントと子プラントに編成して管理。親プラントは24時間有人、子プラントは夜間などを無人にして親プラントから遠隔監視を行う。緊急時には親プラントから復旧操作などを行うとともに、必要に応じて現場作業員が駆け付ける体制が整えられている。

このような遠隔監視・操作システムのメリットについて菊地氏は、「安定供給を維持しながら限られた要員の効率配置が可能になります。平常時、非常時ともに少人数でも各拠点の情報を効果的に共有でき、トラブル時には本社からもアドバイスができます」と話す。さらに「当社のプラントの多くには大型蓄熱槽があり、これをバッファーにした熱供給システムと遠隔監視・操作とは相性が良い」と評価する。

コロナ対策に有効 新たな技術の適用へ

同社のこのような運用体制は、昨今の新型コロナ対策という新たな課題に対しても有効に働いている。万一プラント所員に罹患者が発生し、長時間プラント内への立ち入りが制限されたり、全所員が自宅待機となった場合でもこのシステムを活用して親プラントや本社から遠隔監視・操作することとし、そのための体制を準備するとともに試験を実施し、万全を期している。

とはいえ、東京都市サービスの取り組みはさらに続く。日々のプラント運用においては、効率的な運転や設備巡視など、現場での手動作業がまだ多い。

こうした点に対して、過去の需要動向や気象予測、熱電需要状況などの各種データをAIやIoTなどの新しい技術と組み合わせることで、より正確な負荷予測を行い、運転が自動化できるよう改良を施していく考えだ。また設備巡視においても、高性能・低価格化しているカメラ・センサーなどを活用することで代替できないか、検討・試験を進めている。

菊地氏は「制御技術向上のポテンシャルはまだまだあります。設備運用が次のステップに進むためには、設備設計の思想を抜本から変え、より高度な遠隔監視・制御システムを全てのプラントに標準装備して安定供給を支えていきたい」と展望を語る。

さまざまな設備群を遠隔監視している