消費者行動からの省エネ対策 生活や暮らし方を見直す機会に

2020年10月15日

【気候変動・省エネルギー行動会議】

住環境計画研究所が事務局を務める気候変動・省エネルギー行動会議はこのほど、省エネ行動などをテーマとする研究会議「BECC JAPAN2020」を開催した。新型コロナウイルスの感染拡大により、初めてのオンライン開催となる中、エネルギーや住宅・建築をはじめ、メーカーや大学・研究機関、行政など幅広い業界から延べ237人が参加した。

中上英俊所長のあいさつから始まり、続いて京都大学情報学研究科の川上浩司特定教授が基調講演を行った。その後のセッションでは、「HEMS(家庭用エネルギー管理システム)導入世帯のエネルギーの使い方」や「設備・機器の購買の意思決定」、「卒FITやAIによるエネルギー分析」など、多種多様かつ興味深いテーマが発表された。

オンラインによる発表の様子

川上教授は「不便益のススメ」と題し、不便だからこそ得られる価値や効用について講演。不便であることを積極的に活用する事例を紹介した。例えば、山口県のデイサービスセンターでは段差や階段などをあえて設置し、バリアフリーならぬ「バリアアリー」として入居者が体を鍛える機会になっている。

また、ある自動車工場では組み立て作業の分業化を廃止し、複数工程を一人で作業することで社員のモチベーション向上につながっているという。デジタル化や自動化が進む現代において、不便益の発想が行動変容を促すきっかけになることが示された。

実例をもとにした調査報告 具体的な数値を提示

発表セッションでは、東京都市大学大学院環境情報学研究科の吉田一居氏が、全戸にエネファームを設置した分譲マンションでのエネルギー消費を調査した結果を発表した。それによると、夏季に電力使用量がピークになる家庭が8割を占め、12~3月にかけて床暖房の使用頻度が上がり、ガス消費量が多い傾向になるという。

住環境計画研究所の岸田真一主任研究員は、「卒FIT世帯の蓄電・蓄熱設備導入状況に関する調査」について発表。卒FIT家庭では、約4割が家電の使用時間を日中にシフトしていると述べた。また、蓄電池の導入率は約21%、売電先の変更が約18%といった消費者動向の報告が行われた。

いずれも実例をもとにした調査結果による興味深い発表が相次いだ。消費者の行動や暮らし方、意思決定が省エネに及ぼす影響を考える機会となった。