画像からひび割れを自動検知 インフラ点検をAIがアシスト

2020年10月19日

【東設土木コンサルタント】

道路や橋梁など、社会インフラの老朽化は深刻だ。国土交通省の調べによると、建設後50年経過する道路橋の割合は、73万箇所のうちまだ約25%(2018年時点)にとどまる。しかし23年には約39%、33年には約63%まで急増。トンネル、水門などの河川管理施設も、それぞれ33年には約42%、約62%となるなど、老朽インフラ急増が社会問題化している。

東京電力グループ・東電設計の子会社である東設土木コンサルタントと映像機器メーカーのキヤノンは、これらの問題の解となり得るインフラ点検業務を効率化させる専用AIを共同研究した。

AIによる自動判読で業務効率化を実現する

作業時間を大幅改善 トンネルや発電所にも

東設土木コンサルタントは、橋梁の保守点検時に必要な、微細なひび割れ(クラック)などの変状部位を示した展開図を作成するシステム「CrackDraw21」を販売している。本システムはカメラで撮影した橋梁の床版画像からゆがみなどを補正し、変状部位を見つけ出す作業をアシストする便利な機能を搭載しているが、さらにこれまで人の手で判読していたクラックをAIが自動解析する結果も読み込める機能が追加された。

これは、同社が蓄積するクラック画像をキヤノンに提供し、キヤノンが変状を判読する専用のAIを開発。従来は12時間掛かっていた判読作業を、AIによる作業の自動化により、専門技術者による確認作業を含めて90分まで短縮することに成功。「作業の省力化だけではなく、点検者の技量に左右されない高度な点検を行える」と、同社の島田保之社長はAIのメリットについて説明する。

また国交省は、18年11月に民間企業が持つ道路橋の点検記録の作成支援技術の精度を調査すべく、実際の道路橋を用いた技術試験を実施した。試験には7社が参加しており、同社のクラック判読可能率は7社の中で最も高い「99%」との高い数値を記録。高い精度が評価され、国交省が同月に発表した「点検支援技術の性能カタログ(案)」に同社とキヤノンマーケティングジャパンが共同提供するサービスが掲載された。

他社製品との違いについて事業推進部の野澤英二部長は「クラックなどの変状箇所を判読する技術は多いが、当社のように画像解析から解析後の調書作りまでの一連の業務を含むシステムはほかにない」とアピールする。

既に道路会社などで採用実績もある本システムだが、今後は漏水や剥離も解析できるよう、研究を進めていく。また活用場所もトンネルから火力・水力発電施設など、多くの場所で利用できないかと全国から相談が寄せられているという。点検作業の省力化を果たせる新技術は、今後ますます注目されそうだ。