新型コロナ対策から得た知見 製造所のBCPに反映

2020年10月4日

【ガス設備編/Daigasガスアンドパワーソリューション】

都市ガス会社にとって、コロナ禍の中にあっても、人々の生活や産業を支えるガスを安定供給する使命は変わらない。

大阪ガスの製造所運営を担うDaigasガスアンドパワーソリューションは、感染拡大の早期段階から安定供給の要となる製造所の対策を徹底å、安定操業を堅持してきた。コロナ禍の長期化を見据え、製造所全体で高い緊張感を持って業務に取り組んでいる。

製造所の安定操業堅守へ 感染事例を基に対策徹底

同社は、大阪ガスの製造所の維持、操業とメンテナンスを受託する会社として昨年10月に発足、今年4月に本格的に業務を開始した。泉北製造所の第一・第二工場と姫路製造所の3拠点があり、中央制御室で勤務する運転員は約100人。この中で感染者を出さないことが、これまでの対策の柱だ。

具体的な対策としてまず、中国での感染拡大が伝えられた今年1月末に、運転員が中央制御室に立ち入る際のマスク着用や手指の消毒、体温測定、共有する機器の消毒などを徹底するとともに、関係者以外の中央制御室への入室制限を始めた。
国内でも感染拡大が本格化した3月末には、対策項目をさらに追加。運転員全員に公共交通機関の利用を禁止し、自家用車やタクシーによる通勤を要請した。

運転員の引き継ぎはリモートで実施している

1組当たり5~7人の運転員が1日2交替勤務を行う中央制御室では、運転員の交替時の引き継ぎは、これまでは対面で行っていたが、ウェブ会議システムを活用する方法に切り替えることでほかの組に所属する運転員との接触機会をなくした。

また、運転員以外の所員にも自家用車による通勤を推奨。公共交通機関を利用する所員は別室で勤務するようにしたのに加え、運転員とほかの所員との接触を避けるために食堂の時差利用や動線を分けたり、執務室の座席の間にアクリル板を設けたりと、他社の事業所などにおけるさまざまな感染事例から得た知見を駆使した対策を重ねてきた。こうした対策が功を奏し、また、所員自身が私生活も含めて常時、高い罹患防止対策意識を持って過ごしていることもあって、今のところ運転員はもとより所員に感染者は出ていない。

引き継ぎをリモート方式に 緊急時対策が今後の課題

「ウェブ会議システムを活用しながら、いかに以前と変わらず密な相互連携を図るかに非常に苦慮しました」と語るのは、基地管理部操業管理チームの今田峰文マネジャーだ。

製造所の業務では、チーム間の連携をうまく取ることが安定供給と保安確保のために重視されている。三密を避けるためとはいえ、これまで一つの空間に大人数が集まって行っていた工事や操業の調整作業をリモートで実施することには当初、大きな不安もあった。しかし、以前から情報共有システムやウェブ会議システムを導入していたこともあり、リモートであっても従来と変わらない連携が維持できているという。

さらに喫緊に取り組まなければならないのが、大規模地震などの緊急時の際の対策だ。これまでの対策本部は大人数が一堂に会していたが、三密を回避するためにはメンバーが分散する必要がある。既にウェブ会議システムによる災害対策本部設置の訓練を実施しており、抽出された課題に対する改善策を模索している。

「これまでもBCP(事業継続計画)において感染症は想定していましたが、ここまで長期化し、対策が難しい感染症は想定していませんでした」と今田マネジャー。新型コロナが終息したとしても、コロナ禍から得た新たな知見を製造所のBCP対策に反映することで、安定供給と保安の維持につなげていく構えだ。