都市ガス・火力・再エネの共存目指す エネミックスで果たす安定供給事情

2020年10月4日

【北海道ガス】

北海道ガスが運営する石狩LNG基地は2012年の運転開始以来、道内の天然ガス供給を一手に担ってきた。10月には北海道電力が所有する4号タンクが完成。再生可能エネルギーとの共存も視野に入れながら安定供給を支える。

石狩なくして、北海道に真の天然ガス時代は到来せず――。そう言っても過言ではないほど、今や道内エネルギー供給の一大重要拠点となっている北海道ガスの石狩LNG基地。10月完成の4号タンク(23万㎘、川崎重工業製、北海道電力所有)を含めると、合計貯蔵能力は84万㎘で、一般家庭約150万世帯分の年間ガス使用量に相当する規模だ。

道内一帯に天然ガスを供給 日頃の訓練生きた胆振地震

計4基のタンクのうち、北ガスは1号(18万㎘、川重製)、2号(20万㎘、IHI製)を所有。石狩と苫小牧を結ぶ高圧パイプラインを通じ札幌・小樽・千歳地区に供給するほか、LNGローリー車で旭川、室蘭、帯広、北見地区へ、また内航船で函館、釧路地区などにも供給し、まさに全道一帯をカバーしている。

原料のLNGはロシア・サハリン産の輸入を中心に、最近はスポット玉も調達し多様化を図っている。19年度実績(北ガス分)で外航船11隻を受け入れている。

ガスエンジンの排熱でLNGを気化する設備

一方、LNGの出荷実績(同)を見ると、19年度はローリー車7285台(約9万7000t)、内航船62隻(約7万7000t)。冬場の需要期には、10レーンあるローリー車の出荷設備が1日・1レーン当たり6~7回転し、「休む暇もないのほどのフル操業」(澁谷聡・石狩LNG基地所長)だ。厳しい暴風雪や地震などの災害も想定し、万全の体制を敷いて安定供給を日々遂行している。

「日頃の訓練、対策が生きたのが、18年9月に発生した北海道胆振東部地震です。最大震度7の大地震の影響でブラックアウト(全域停電)が発生しましたが、ガスの供給に支障はありませんでした。さらに北海道の電力供給力確保のために、基地内の北ガス石狩発電所から北電さんに電力を緊急融通しました」。同社取締役常務執行役員の前谷浩樹・生産供給本部長はこう話す。

11月にGEの増設完了 風力発電の調整力も想定

その石狩発電所では現在、ガスエンジン(GE)2機の増設工事が佳境を迎え、11月に完成する予定(総出力9万3600kW)。ユニークなのは、出力7800kW(川重製)のGEを並列させていることだ。その理由の一つに、基地周辺に林立する風力発電への対応がある。

石狩発電所内で稼働する高効率ガスエンジン

「風力の系統接続時に出力安定化が求められており、当社の発電所はその調整力としての役割を担うべく検討を進めています。GEが12台あれば、ガスタービン1台よりも柔軟に負荷を調整できる。起動時間が10分程度と早いうえ、発電効率50%というGEの高性能を余すところなく発揮できるメリットもあります。設計時から再生可能エネルギーの調整力を想定しているガス発電所は、全国でも珍しいのでは」(前谷氏)

この空き地に北ガスの風力発電が建設される

北電が所有する3、4号タンクは同社の石狩湾新港発電所(57万kW)向けに燃料のLNGを供給する。30年までに2、3号機が順次建設され、全機完成時には総出力171万kWの大規模火力となる計画だ。また石狩湾新港沖では、計300万kW相当もの洋上風力計画が持ち上がっている。

都市ガス、火力、再エネ――。多様なエネルギーが集積する石狩湾新港で、北海道全域のエネルギーの安定供給を担う石狩LNG基地の役割は大きい。