新たな需要開拓や技術の確立 分離後は導管会社が担い手に

2020年11月4日

インタビュー:広瀬道明/日本ガス協会会長

大手3社の導管分離を控え、都市ガス事業は歴史的な大転換期を迎えている。業界は、この歴史的な変革にどう向き合い存続を目指そうとしているのか。

ひろせ・みちあき 1974年早大政経学部卒、東京ガス入社。
2006年執行役員企画本部総合企画部長などを経て14年社長執行役員、
18年会長。18年6月に日本ガス協会会長に就任。

――都市ガス小売り自由化の動向をどう見ていますか。

広瀬 これまで市場競争は、首都圏、東海、近畿、九州地方が中心でしたが、北海道電力が参入をしたことでこれに北海道エリアが加わり、電力と同様に全国に広がったと認識しています。

――新型コロナウイルスが事業に与える影響は無視できません。

広瀬 経済活動の自粛により、電力もガスも業務用を中心に需要が激減した上、各社とも営業活動ができずスイッチング(契約切り替え)が停滞しました。特に対面営業を強みとしてきた都市ガス会社は、営業手法に大きな課題を突き付けられることになりました。これを機に、ウェブなどによる営業手法の重要性がより強く認識され広まればと思います。

歴史的大転換をもたらす 導管分離と脱炭素化

――資源エネルギー庁において、「2050年に向けたガス事業の在り方研究会」が始まりました。 広瀬 都市ガス事業が始まって、再来年で150年となりますが、今、この長い歴史の中で経験したことがないような大きな転換期を迎えています。「レジリエンス(強靭化)」や「デジタル化」といったさまざまな要素がある中で、最も大きな変化の要因は、「導管分離」と「脱炭素化」だと考えています。

 「製造」から「供給」「サービス」までを一体的に運営し、ガス体エネルギーを提供するという事業を150年近く変わらず続けてきましたが、導管(供給)が分離されることになります。また、石炭・石油・LNGと原料は変わってきましたが、時代は脱炭素に向かっています。これらの課題に対し、今後どうしていくべきか、事業者自らも考えていきますが、新規参入者を含め多様な分野の方に在り方研究会に参加いただき、将来のガス産業について幅広い議論をしていただくことで、その成果を、エネルギー基本計画をはじめとした今後の政策議論に反映することができればと思います。

――導管分離はどのような変革をもたらすでしょうか。

広瀬 単に導管部門を別会社化するだけでは意味がありません。これまではガス会社の一部門でしたが、導管分離後は、独立した会社として主体性のある経営が行われるようになります。導管会社は、導管によるガス供給の安定性と効率性の向上に加え、新たな需要開拓や脱炭素化に向けたメタネーション技術の確立、スマートメーターを活用したサービスなど、新しい事業分野に率先して取り組んでいくことになるでしょう。

――インフラ強化やレジリエンスの確保に向けた取り組みについてはどうお考えですか。

広瀬 大規模自然災害が頻発する中で、レジリエンスの観点から送電網、導管網の拡充・広域化の必要性は高まっています。ガスでは、太平洋側と日本海側を横断するようなパイプラインの整備について、具体的に検討していくべきではないでしょうか。