「2脚1/2面包み込み工法」を初採用 制約の多い土地での工事が可能に

2020年11月9日

同社にとって初採用の工法だったこともあり、工事に携わった送電工事グループの加賀良副長は「設計から施工に至るまで初めての経験の連続だった」と振り返る。

まず、鉄塔の設計に当たっては、既設の鉄塔基礎と干渉しないような基礎の配置方法や、既設鉄塔の腕金延長および新しい鉄塔組み立て時の荷重を既設鉄塔に預ける際の強度設計、基礎工事時の掘削による既設鉄塔基礎への影響(引き揚げ耐力低下)を考慮した掘削相当土量分の算出など、数多くの項目について詳細な検討を要した。

通常、これらの強度設計や離隔設計は電力会社が独自に行うが、前例のない今回はそうはいかなかったようだ。加賀氏は「当社には、それまで2脚1/2面包み込み工法に関する知見がなかった上に、設計を担当した会社が使用していた設計プログラムが当社が使用するものと異なっていたため、計算結果の検証に苦労した」と語る。

また、工事が始まってからも、一筋縄ではいかなかった。鉄塔を半分ずつ建設する本工法では、新たに建設する鉄塔が倒壊しないよう、既設鉄塔に連結治具で固定させて強度を確保する必要がある。その連結治具は、工事完了後には取り外し、処分するものだが、今回の工事でしか使用できない完全なオーダーメイドのため、個別の設計が必要だった。

次から次に直面する課題に技術と工夫で取り組んだことは、同社の技術者にとって貴重な経験となったそうだ。また今回の工事を請け負った工事会社にとっても、今回の特殊な包み込み工法は初めての経験で、工期通りに作業を終えられるのか、現場にはいつも以上の緊張感が漂っていたという。

制約のある現場は増加傾向 今回の知見をほかの現場へ

こうした工事現場での苦労に加え、長期間必要となる停電調整にも骨を折った。一般的に、新たに鉄塔を建設して電線を張り替える場合の停電期間は片側10日程度であるのに対し、今回は既設鉄塔の腕金延長や新しい鉄塔の2脚1/2面ずつの組み立て、そして、電線張り替えのための期間が必要だったため、片側約40日の停電期間を要した。加賀氏は「停電作業調整には、かなり気をもんだ」と話す。

工事は鉄塔の半面ずつ進行

今回のように現場の状況が建設時とは一変した条件下にある経年鉄塔を更新するケースは、近年珍しくないという。 中国電力ネットワークでは、今年度内に計画している鉄塔建替工事で、市街地に近い2基についても同工法を使用する予定。同社は、今回得た知見を活用し、一層の安定供給に努めていく構えだ。

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