原子力界でのロスアトムの実力 核燃サイクルで世界をリード

2020年11月17日

【ロスアトム】

日本ではこれから六ヶ所再処理工場の稼働が始まり、核燃料サイクルのスタート地点に立つ。だが、隣国ロシアのロスアトム社は、核燃料サイクルで既に世界をリードする存在になっている。

ロスアトム社には、ウラル地方とシベリア地方に使用済み燃料の再処理工場がある。いずれも六ヶ所工場と同じように、ピューレックス法(PUREX法)で使用済み燃料からプルトニウム、ウラン、そして高レベル放射性廃棄物(HLW)を分離する。ただ、六ヶ所工場と違い、シベリアの工場では液体試薬をループすることにより、液体廃棄物を全く出さない。

高速炉用のMOX燃料の集合体

再処理により分離されたウランは濃縮され、核燃料として再利用されている。RBMK(黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉)は、全てこのウラン燃料を使用している。また、VVER(ロシア型加圧水型原子炉)の燃料に転換することも計画されている。

人工元素であり、ウランの核変換によってのみ生成されるプルトニウムは、エネルギー強度の面でウランよりもさらに価値がある。核分裂時にはウランの核分裂より14%も多くエネルギーを生む。

しかし、軽水炉では十分なパワーが出ず、高速炉で実力を発揮する。ロシアの高速炉、BN−800は再処理で作り出されたプルトニウムを燃料に使用している。

廃棄物から有用元素を分離 アクチニドを高速炉で燃焼

再処理により出るHLWの中には、現在世界で最も高価なカリフォニウムの原料になるキュリウムなどの元素を含んでいる。また、同じようにセシウム、ストロンチウム、アメリシウム、プロメチウム、キセノン、クリプトンなどの成分も産業利用ができる。

課題はそれらの分離だ。ロスアトム社は、HLWから、まずマイナーアクチニド(ネプツニウム、アメリシウム、キュリウム)と、「ホット」フラクションと呼ばれるストロンチウム、セシウムを分離することに取り組んでいる。アクチニドは高速炉で燃焼し、ホット成分は強制冷却する。

これらの作業により、使用済み燃料のうち約3%とごく一部だけを最終処分にでき、放射性廃棄物の危険性を大幅に減らせられる。ロスアトム社は廃棄物の組成をこのようにすることを目標にしており、その廃棄物は300~350年後には地表近くで処分できる。

また、原子炉ではMOSART(溶融塩アクチニドリサイクル転換炉)の開発を進めている。核燃料物質を溶融塩に溶解させた液体燃料炉で、フッ化リチウム塩、核分裂生成物(主にプルトニウム)、マイナーアクチニドを燃料とする。

燃料塩が下から上にゆっくりと移動し、核反応を起こしてマイナーアクチニドを危険性の低い核種に変換していく。2022年に概念設計を作成し、31年の運転開始を目指している。