中容量パワコン利用の太陽光発電所 ユニークな分散型で初期投資を低減

2020年12月11日

【デルタ電子】

赤穂エナジーパークの全景

デルタ電子は台湾の電機メーカー。スイッチング電源や電子部品、エネルギー関連では太陽光発電用パワーコンディショナー(PCS)などが主力製品だ。そんな同社は太陽光発電所「赤穂エナジーパーク(出力4600kW)」を2016年1月から稼働している。電機メーカーのデルタ電子が同発電所を持つのは、再エネ固定価格買い取り制度(FIT)を利用した売電事業に加え、自社PCSを利用した分散型太陽光発電所のモデル施設、PCSの実証フィールドといった目的がある。
赤穂エナジーパークは分散型方式を採用する。発電所を8つの区画に分割し、1区画ごとに20kWクラスのPCSを25台、50kWクラスを10台採用する。通常の発電所では、1000kWクラスのPCSを使用するが、屋内仕様のため建屋をつくり空調設備を導入しなければならないため、初期投資コストが高額になる。また、故障した場合、部品が届くまで発電所を停止しなければならない。
これに対し、同社の中容量PCSは低コストで導入でき、故障しても新品を翌日に持ち込むことも可能だ。運転停止を最小に抑えることができる。さらに太陽光発電所の一部が日陰になると、PCS単位で発電量全体に影響する。分散型は区画を細かく分けるので、影響を最小限に食い止められる。
実証フィールドとしては、分散型向けPCSの製品開発に役立てる目的がある。PCSは本来であれば直射日光を避け、パネル下部などに設置するのを、あえて直射日光に晒されるように設置し、性能検証を行うなどして、研究開発に役立てている。
市場開発チームの田中誠二副マネージャーは「当社は海外企業のため、日本国内のお客さまからシビアに見られます。そこで、分散型発電所でPCSがどのように設置・運用しているのかを顧客に実際に確認してもらう場として活用しています」と発電所を所有する意義を話す。

発電所建設で地元と向き合う 要望を全て受け入れる

同発電所を建設に当たっては、地元自治会役員との話し合いを幾度となく行い、地元自治会と環境保全協定を締結した。この中には、以前の所有者が山林を伐採し、露出した山肌を植林して回復することや、地元農家が稲作に利用する貯水池に流れ込んだ土砂の浚渫などが含まれた。元自治会長の田淵和彦氏は「外資のため不安だったが、地元の要望をすべて受け入れてくれた」と対応に満足している様子だ。同社では、今後もエネルギー事業の開発拠点として利用しながら、地元住民に受け入れられる施設として運営していく方針だ。