エネルギー以外の成長分野確立目指す リフォーム提案をワンストップで

2020年12月30日

インタビュー:石井敏康/東京ガスリノベーション 社長


本誌 東京ガスグループの住宅関連業務の2社が合併し、7月に東京ガスリノベーションが設立されました。合併にはどんな狙いが。

石井 まず、合併前の東京ガスリビングエンジニアリングでは、既存集合住宅のガス機器のメンテナンスや給排気設備回りのサービス、トイレやキッチンなどの機器交換と、間取り変更を伴わない、リフォーム手前の業務を行ってきました。他方、もう1社の東京ガスリモデリングはリフォーム専業で、両社とも首都圏を中心としつつも、事業領域はすみ分けてきました。しかし、ニーズに対しワンストップで対応できる体制にすべきとの判断から、シナジーのある2社の統合に踏み切りました。

住宅に関わる社会的ニーズとして、レジリエンス(強靱化)や高齢化社会への対応、省エネ、空き家対策などがあります。また、今後は既築の市場が主戦場になると言われていますが、業界ではまだまだ新築に目が向きがちです。しかし「2050年カーボンニュートラル」を目指すなら、新築よりボリュームがある既築の省エネの深掘りが、一層重要になります。

リフォーム業界で伍していく上で、例えば住宅メーカー系は系列のリフォームには強いですが、当社はさまざまな系列での実績があります。もともとはエネルギー回りや配管修理から入り、お客さまとの関係性を培ってきました。その距離感を大事に、お客さまの声に徹底的に耳を傾け、ニーズを実現する提案を心掛けています。

快適な省エネ提案を意識 コロナ対応も重要課題に

本誌 特に企業のカーボンニュートラル対策が注目されています。

石井 東ガスグループ経営ビジョン「Compass 2030」でも強調しましたが、CO2大幅削減に対応する中で、エネルギー以外の業務でも勝負しなければグループの成長は望めません。当社では先述の課題を踏まえ、各地域のライフバルとも連携しつつ、既築住宅への生活回りのサービス全般を訴求していきます。

具体的には、電化やレジリエンスに対するニーズの高まりの中で、太陽光と蓄電池のセット販売の強化、集合住宅向けコージェネレーションシステムやエネファームをさらに活用するサービスに力を入れます。また、当社の強みを生かし、高齢者が住まいやすい、断熱を含めた省エネ住宅へのリフォーム提案にも取り組みたい。ただ、カーボンニュートラルは意識しながらも、それが一番の目標ではないと思っています。ネットゼロで資産価値を上げつつ、お客さまのアイデアや希望を実現するような提案を目指していきます。

本誌 そしてコロナ禍も重要なキーワードとなっています。

石井 マイナスの面としては、修理と違いリフォームを急ぐケースは少ないため、非接触を求める傾向が強まったことで、上期の業績は厳しいものとなりました。一方、家庭で過ごす時間が増え、ワーキングスペースの確保や巣ごもり需要、感染予防に効果的な非接触・除菌・換気といった新たな需要が拡大しています。このニーズを掘り起こし、いかに響く提案ができるかが、今後の業績を取り戻す上で重要になります。また、オンラインツールの活用は、社内業務の効率化と、お客さまの時間節約の両面にメリットがあると捉えており、最大限活用しています。

社員には新しいことに尻込みせず挑戦することを求めています。失敗してもその過程を共有できれば、社にとってプラスになります。今年の新卒社員は、50年には50歳過ぎ。彼らが将来も当社で活躍できるよう、今からどれだけ新しい仕事を作っていけるか、挑戦していく所存です。