HPによるCO2削減効果を試算 国際公約による目標達成に貢献

2021年1月9日

【ヒートポンプ・蓄熱センター】

2050年に温室効果ガスを実質ゼロにするとの政府目標が示され、日本は脱炭素に向けかじを切った。この脱炭素の鍵となるのが電化技術。とりわけ、ヒートポンプ(HP)が貢献しそうだ。

ヒートポンプ・蓄熱センターはこのほど、日本で今後ヒートポンプが普及拡大した想定で試算を行い、最終エネルギー消費量と温室効果ガスの削減効果の見通しを発表した。分析の対象には、ヒートポンプへの代替が可能な熱需要のある設備として給湯、空調、加温機器などを選定。家庭、業務、産業といった業種ごとに試算した。また、目標年度までのHPの普及率がおおむね90%の高位ケース、60%の中位ケース、40%の低位ケースで結果を示した。

分析の結果によると、中位ケースで18年度の数値と比較した場合、最終エネルギー消費量は30年度に914万㎘、50年度に3132万㎘の削減となることが判明。また、温室効果ガス排出量は30年度にCO2換算で3754万t、50年度に1億3699万tの削減効果となった。

産業用ラインナップが拡充 高温領域の開発が進行

今回の結果は、国際公約の目標達成に向けて大きな後押しとなりそうだ。温室効果ガスの削減効果の数値は、中位ケースで日本が提示した「約束草案」の30年26%減となる約3億800万tの約12%に相当する。また、「パリ協定の2℃目標」については、50年80%減となる約9億5000万tの約14%に匹敵する。ヒートポンプの優位性が改めて示された格好だ。

温室効果ガス排出量削減効果(2018年度排出量基準)

業種・用途別で削減効果を見ると、産業部門の加温工程における削減の余地が最も大きい。だが、工場や生産工程ごとに多種多様な熱の利用方法があり、一律でのHP導入が難しいといった課題がある。

その一方で、産業用HPのラインナップは広がりを見せている。例えば、高温の空気加熱ができる熱風HPや蒸気発生HPの登場で、乾燥工程や殺菌工程などへの活用が可能になった。また、メーカー各社や新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)が高温領域に対応できる製品の開発を進めており、HPを活用できる業種や用途・工程は徐々に増えている。

建物や機器・設備類はライフサイクルが長く、30年、50年までに改修・更新する機会は1度か2度しかない。今すぐにでもHP導入を盛り込んだ改修・更新計画が必要だ。コロナ禍からの経済復興と気候変動対策を組み合わせた「グリーンリカバリー」としてもHPのさらなる普及が求められる。