工場跡地活用のスマートシティ 実質再エネ100%電気を供給

2020年12月30日

【パナソニック/大阪府吹田市

Suita SST完成予想図

高度成長期、日本各地にはさまざまな工場が建てられ、急速な経済発展を遂げた。現在、そうした工場の一部は役目を終え、企業は跡地の活用に向けたCRE(企業不動産)戦略を求められている。


パナソニックでは、工場跡地の土地をサスティナブル・スマートタウン(SST)と名付けた街づくりに活用。不動産などの「財務価値」をはじめ、先端技術の導入や多くの企業団体が関わる「事業価値」、暮らしの課題を解決する「地域価値」の三つを高める戦略を打ち出している。その取り組みの3カ所目となるSuitaSST(大阪府吹田市)では現在、2022年の街開きに向けて建設工事の真っただ中にある。


SuitaSSTは、代表幹事のパナソニックをはじめ、関西電力、大阪ガスなどの異業種16社と吹田市が参画。エネルギー、セキュリティー、ウェルネス、モビリティー、コミュニティーの五つのサービス領域で協業する。

非化石証書の価値を付加 高圧一括受電でエリア供給

エネルギー面においては、SSTエリア内の商業施設、住居施設など複合開発街区全体で消費される電気を実質再エネ100%とする日本初※の試みに取り組んでいる。関西電力が自社の「再エネECOプラン」を活用し、再エネ由来の非化石証書の持つ環境価値を付加した電気をSuitaSSTへ供給。エリア内の集合住宅や商業施設への供給は関西電力のグループ会社である関電エネルギーソリューション(Kenes)が街区内に自営線を敷設して各施設内へ電力を供給する。また、マンションの一部の住戸に設置される燃料電池「エネファーム」などのガス機器由来の電気をJ-クレジットの購入で相殺するといった業務もKenesが担当する。


住居向けの電力はマンション一括受電事業を手掛ける同グループ会社のNextPowerが担当する。パナソニックビジネスソリューション本部CRE事業推進部の坂本道弘事業開発総括は「関西電力さまの協力のもと、エリア高圧一括受電との組み合わせにより、非化石証書を購入するコストをスキーム上で取り込み、通常の電力料金と同程度で、再エネ由来のエネルギー利用を実現しています」と話す。

実質再エネ100%電気供給の流れ


このほか、エネルギーではレジリエンス対策にも取り組む。地震や台風など、大規模災害時にライフラインが途絶えても、人が生きていられる時間は72時間といわれている。そこで、SSTのエリア内に太陽光、電気自動車充電スタンド、蓄電池を設置し、自立運転できるようにする。また、エリアの住民だけを守るのではなく、周辺住民にも開放し、コンセントやWi−Fiなども利用できる仕組みづくりも行う計画だ。さらに、ウェルネス複合施設でエネファームを4戸に1台の割合で設置し、湯と電気を共有するユニークな取り組みを大阪ガスと進めている。

先般、菅義偉首相は「温室効果ガス排出50年実質ゼロ」を宣言した。そうした動向に対し、坂本氏は「当社は先取りして自主的に社会課題の解決に取り組んできました。今後も、手を緩めることなく進めていきたい」と意気込む。Suitaに続くSSTの建設は未定だが、蓄電池を含めたエネルギーを蓄える仕組みで新たなチャレンジをしていきたいとのことだ。


※関西電力調べ