エネルギーシステムの最適解 東京ガスグループの技術を結集

2021年1月1日

安定供給ニーズに応える 幾重ものバックアップ体制

松本 それにしても設備が大規模です。維持管理も大変ですね。

菱沼 機械ものですから壊れることはあります。ただ、仮に設備の1台が壊れたとしても、そのほかの機械がバックアップします。排ガスボイラーが壊れたり、あるいはガスエンジンが止まってもガス焚きの貫流ボイラーでバックアップし蒸気と温水供給をしたり、あるいは別系統のコージェネで支えるなどしています。

 たとえ断水になったとしてもエネルギー供給が止まらないようにしています。例えば、効率性を重視すれば冷却にクーリングタワーを使うのが一般的ですが、今回はラジエーター式です。水が途絶えてもプラントを運用できるからです。こうした工夫は需要家の皆さんが、とにかく安定供給を重視されているからにほかなりません。

松本 いろいろなリスクを想定しながら設計されたのですね。それにしても、大規模な設備構成にもかかわらず、制御室は非常にコンパクトですよね。スマート化が進んでいる証左だと思いました。

菱沼 プラントの運用は自動化を図っています。運用して1年近くたちますが、工業団地群の需要面の予測は、これまでの積算値でおおよその計画値は立てられます。複数のコージェネ設備を、計画をベースに運転しながら、最適稼働となるように自動的に補正する仕組みとなっています。

松本 とはいえ実際の「人の手」も必要かと思います。オペレーターの体制はどうなっていますか。

菱沼 現場の制御室では平時はもちろんのこと、緊急の事態にも即座に対応できるように、24時間の常駐管理体制を組んでいます。同時に、今回のスマエネの中核を担うコージェネ設備に対しては、現場と遠隔の二極体制で管理しています。当社では東京・豊洲でコージェネ設備をはじめとしたエネルギーサービス設備を専門に監視しているプロがいて、遠隔で全国の設備の状態を日々確認しています。ヘリオネット21というサービスで、異常を検知した場合は即座に対応できる体制にしています。

運用の改善余地あり 各地に広がる可能性も

松本 万全な安定供給体制を担保しているわけですね。運開から1年経過したわけですが、運用面で改善の余地はあるのですか。

菱沼 熱利用についてはまだまだポテンシャルがあると考えています。熱利用が進めばさらなる省エネにつながり、その恩恵を皆さまとシェアする仕組みですので、改善の余地はあると思います。

松本 こうした工場群を丸ごとエネルギーマネジメントする仕組みは、今後各地で生まれる可能性はあるのでしょうか。

菱沼 可能性はあります。今回のポイントとなった地元自治体のサポートもさることながら、既存の工業団地で、熱需要を中心とした一定規模のエネルギー需要が集まっており、なおかつ需要家の皆さま方がそろって省エネやCO2削減といった志を共有するといった条件がそろえば、このスキームが広がる可能性はあります。実際に数々の問い合わせが来ています。

 加えて、将来的にはここにある分散型電源を工業団地だけではなく、その街全体で活用し、地域の皆さまに貢献できるような仕組みを考えていけたらと思っています。

松本 需要側、供給側、そして自治体の3者が一体となり、皆がWin-winとなったプロジェクトということがよく分かりました。こうしたスキームが各地で広がっていけばいいですね。

制御棟の前で菱沼常務(右)から説明を聞く松本氏

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