【特集2】CO2回収に新技術を採用 期待される低コスト化への道

2021年2月3日

レポート/川崎重工業、RITEほか

CCUSの課題に対し、川崎重工業、地球環境産業技術研究機構(RITE)が実証を行っている。

これは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「先進的二酸化炭素固体吸収材の石炭燃焼排ガス適用性研究」に採択されており、石炭火力発電所で発生するCO2を分離・回収する内容。これまでRITEは基礎研究(2010年度~14年度)を行い、日量3㎏のCO2分離・回収を達成。その後、川崎重工の工場内で日量7tのCO2分離・回収試験を実施(15年度~19年度)した。今回は、石炭火力発電所に日量40tにスケールアップしたベンチプラントを設置し、石炭燃焼排ガスからのCO2分離・回収に取り組む。

各社の役割は、川崎重工がパイロット設備の設計・建設、およびCO2分離・回収試験を、RITEは使用する固体吸収材の大量製造技術および性能分析などを担当する。また関西電力が試験を行う舞鶴発電所内の敷地を提供し、実際に運用されている石炭火力発電所での実証試験に協力している。

回収に固体吸収材を使用 コスト大幅減の可能性

最大の特徴は、CO2を吸着する性質を持つアミンを含有した球形の多孔質セラミックを利用してCO2を分離・回収する「固体吸収法」を採用している点だ。実証に用いるCO2は、脱硝装置、電気集じん器、脱硫装置などを通過し、煙突から大気中に放出される排煙の一部を使用する。

「吸収塔」で固体吸収材を用いて排煙からCO2を回収し、「再生塔」で吸収材に蒸気を流してCO2を分離。その後、「乾燥塔」で吸収材を乾かした後に吸収塔に戻して再利用する。川崎重工が開発した「KCC移動層システム」だ。

既存のCO2回収法は、アミンなどを含む溶液にCO2を吸収させて分離し、その溶液を加熱して回収する「化学吸収法」が主流だが、CO2を吸収する媒体が液体のため分離に必要な熱量が高く、回収コストが高くなってしまう。実際、1t回収するのに約2.5GJもの熱量を消費する必要があり、設備などの建設費用などを含めると、CO2を1t回収するのに4200円もの費用が掛かるといわれている。

対して固体吸収材の場合ではCO2を吸収する媒体が固体で比熱が小さく、溶液の蒸発に伴う潜熱も要しないため、コスト低減が可能。実証でも熱消費量を1.5GJまで引き下げ、コストを2000円台にすることを目指している。本実証研究では、CO2を日量40tの規模で分離・回収するが、将来的には本技術をスケールアップした実用設備によって、CO2の排出削減に貢献する見込みだ。

KCC移動層システムの概要図(画像提供:川崎重工業株式会社)