温泉とともに湧出するガスを活用 コージェネでホテルなどにエネ供給

2021年2月5日

【川根温泉】

SLで有名な大井川鉄道で、始発の金谷駅から30分ほど北の山間に向かった所に川根温泉はある。1994年12月に掘削された同温泉は毎分730ℓの湯量が、今も自噴している。島田市観光課観光施設係の天野幸治課長補佐は「温泉を過疎化が進むこの地域の観光や産業振興の起爆剤に位置付け、温泉をつくることになりました」と経緯を話す。温泉湧出とともに、川根温泉ホテルをオープン。現在では多くの観光客を集めている。

メタンガスで発電した電気が供給されている川根温泉ホテル


一方で、川根温泉はお湯とともに湧出するメタンガスを主成分とする可燃性ガスを大気に放出していた。温室効果ガス排出抑制や再生可能エネルギーの活用といった機運が高まりを見せつつあり、可燃性ガスの有効利用について2012年から検討を開始した。
可燃性ガスはメタンガスを86%含む。ガス量も常時1時間当たり30㎥程度が確保でき、25 kWクラスのヤンマーエネルギーシステム製マイクロコージェネを3台稼働するのに十分であると分かった。
だが、計画を進める上で鉱業法に基づく採掘権の取得が課題となった。鉱業法は04年に一部改正され、特定区域制度が導入された。これにより、国が特定区域を指定し開発事業者を募集する制度になったのだ。同制度が導入された直後のため前例がなく、同地を特定区域にしてもらう交渉を国と行い、その後、特定区域の指定と開発事業者の公募を経て、全国初の同制度を利用した鉱業権として設定された。メタンガス発電の検討に入ってから5年の歳月をかけて実現したのである。

ホテル横に設置したコージェネ


ホテルの電力6割を賄う 日帰り温泉に熱を供給


温泉にはコージェネのほか、ガスコンプレッサー、ガスホルダーを設置。発電した電気は川根温泉ホテルに、排熱は隣接する日帰り温泉に供給している。コージェネは4台設置しており最大100kWの発電が可能だ。深夜は需要が少ないため、ガスホルダーに貯めて、ホテルで使用する電力の約6割を賄い、ピークカットにも役立っている。排熱は日帰り温泉の沸かし湯に使われており、ガス代の削減に寄与している。BCP(事業継続計画)対策としても、非常用発電系統の一部負荷を肩代わりすることで、非常用発電機の持続時間を延長できる。
川根温泉の有効利用に関して、アドバイザーを務めた静岡大学グリーン科学技術研究所の木村浩之教授によると、「静岡県中西部一帯は川根温泉周辺だけでなく、温泉を掘ると広範囲にわたって高濃度のメタンガスを含有する可燃性ガスが湧出する可能性が高い。ほかの地域でもメタンガスを活用する事例が出てきてほしい」とさらなる活用に期待する。温泉が静岡県の地域振興や観光だけでなく、エネルギーや環境の面でも貢献していきそうだ。