進む革新的低炭素石炭火力の技術開発 カーボンリサイクル実証研究拠点化も

2021年2月9日

【中国電力】

中国電力と電源開発が共同出資して革新的低炭素石炭火力の実現を目指す大崎クールジェン。カーボンリサイクル技術の実証研究拠点化で期待は高まるばかりだ。

広島県竹原市からフェリーで30分。瀬戸内の柑橘の島、大崎上島町で、中国電力と電源開発(Jパワー)が共同出資する大崎クールジェン(OCG)は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として革新的低炭素石炭火力発電の実現を目指す一大プロジェクトを進めている。

2019年9月、経済産業省は、CO2を資源として再利用するカーボンリサイクル技術の実証研究拠点に大崎上島を指定した。世界最先端の実証試験と研究開発が進む現場を取材した。

革新的低炭素石炭火力の実証を行っている大崎クールジェン

順調に進むOCG実証事業 CO2分離回収実証も進捗

OCGの実証事業は3段階で構成されている。19年2月末に完了した第1段階では、究極の高効率発電技術である石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の基盤技術である酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)の大型設備実証試験を行った。

発電システムの性能や信頼性、経済性など全ての試験項目で目標を達成。商用機での送電端効率約46%(HHV)を達成する見通しが得られたほか、再生可能エネルギーの急な出力変動にも対応できる高い調整力が実証できた。

現在進行中の第2段階では、酸素吹IGCCにCO2分離回収設備を組み合わせたシステム検証が行われている。当該設備では、石炭ガス化ガスの一部をCO2分離回収設備へ送り、触媒を用いてガス中の一酸化炭素を蒸気と反応させ、CO2と水素に変換。CO2吸収塔でCO2を分離回収する。CO2を取り除いたガスは、水素濃度の高い燃料としてガスタービンで活用される。

実証試験では、「CO2回収効率が90%以上」「回収CO2の純度が99%以上」の目標を既に達成している。大崎クールジェン取締役・総務企画部の久保田晴仁部長は「現在は、商用機でCO2を90%回収した上で、送電端効率40%(HHV)程度の見通しを得るために、分離回収によるエネルギー損失を抑える試験を行っており、目標達成に向け、着実に取り組みます」と気を緩めることはない。

さらに21年度に実証を開始する第3段階では、現行の設備に燃料電池を組み合わせ、CO2分離後の水素リッチガスの燃料電池への適用性を確認し、最適なシステムの実現に向けて実証を行う。

第2段階で用いたCO2分離回収設備

1 2