【特集2】アンモニア混焼でCO2を削減 石炭火力で実現する燃焼技術

2021年2月3日

レポート/IHI

CO2フリーの燃料として期待されているのが、アンモニア(NH3)だ。水素と違ってマイナス33℃または8・5気圧で液化し運搬できるため、特殊なタンカーは不要。既に農業分野で肥料として使用しており、製造の技術開発も必要ない。また、可燃性ガスなので直接タービンに入れて利用できるといった利点がある。

IHIは内閣府が2014年度から18年度にかけて取り組んだ「戦略的イノベーション創造プログラム」に参画し、同社のガスタービン、微粉炭焚ボイラー、SOFC(固体酸化物形燃料電池)でアンモニア混焼の原理実証を行った。

相生事業所では石炭火力ボイラーの試験設備にアンモニアを20%混焼し、CO2の排出量を直接的に20%削減。IGCC(石炭ガス化複合発電)よりもCO2の排出量は少なくなり、排ガス中の未反応NH3はほぼゼロ、NOxも石炭と同等との結果が出た。

石炭火力向け大容量燃焼試験設備(相生事業所内)

現在は混焼技術の高度化を目指すNEDOのプロジェクトで、石炭火力向けに60%混焼を可能にするバーナーを開発した。21年度以降に100万kW級の商用石炭火力での実証開始を目指す。ガスタービンではアンモニア100%専焼の研究を開始予定だ。

大規模改修は不要 既存火力でもCO2を削減

資源・エネルギー・環境事業領域ビジネス創生グループの須田俊之グループ長は、「CO2削減への取り組みが加速している今、規模は小さくても早く社会実装することが重要です」と話し、使いやすさの面でもアンモニアは非常に適したソリューションだと強調する。

設備を大規模改修しなくても、IHIが開発したアンモニア混焼用のバーナーを導入すればCO2は削減できる。そのほか必要な設備はアンモニア供給のためのタンクと気化器のみだ。

IHIは日本エネルギー経済研究所とサウジアラムコが進めるブルーアンモニアのサプライチェーン実証試験に協力しており、混焼試験の一部にはこのブルーアンモニアを使用している。

サプライチェーンが本格化し導入も進めば、カーボンニュートラルな燃料としてアンモニア活用への期待はさらに高まる。