【特集3】グリーン水素で豪州企業と連携 大規模サプライチェーンを構築へ

2021年3月4日

岩谷産業は、豪州企業との連携で「グリーン水素」の事業化に向けた検討を開始する。大規模サプライチェーン構築により、水素利活用の社会実装を目指していく構えだ。

岩谷産業が、再生可能エネルギーによる電力で製造する「グリーン水素」の大規模サプライチェーン構築に向けて動き出した。海外で製造したグリーン水素を液化製造プラントで液化し、大型の液化水素船で日本に輸入する事業を確立させる。

同社は今後、豪クイーンズランド州政府直営の電力会社スタンウェルとのグリーン水素製造・液化・輸入事業化に向けた検討を進めていく。グリーン水素の製造は、豪州の太陽光発電や風力発電所などを活用する計画だ。

スタンウェルは、電力の送配電事業を行っており、電力会社としては同州最大の規模を誇る。そのノウハウや既存リソースを生かすことで、将来の商用化を目指していく。

さらに、川崎重工業、豪鉄鉱石生産会社のフォーテスキュー・メタルズ・グループ(FMG)とも、グリーン水素サプライチェーンの事業化に向けた検討を開始する。川崎重工はこれまで、水素を「つくる(水素液化機)」「はこぶ(液化水素運搬船)」「ためる(液化水素貯蔵タンク)「つかう(水素ガスタービン発電設備)」という全てのフェーズにおける技術を所有している。一方、FMGは、世界規模のインフラや鉱業資産の拡充におけるバリューチェーン構築やプロジェクト開発の知見を持っている。加えて、FMGは2040年までにCO2などの温室効果ガス排出量の実質ゼロを目標としており、グリーン水素を含む新規事業への進出を図っている。

3社は、世界最大の水素に関するグローバルイニシアチブ「ハイドロジェン・カウンシル(水素協議会)」に参画している。今後は、将来の商用化を見据えたコンソーシアム組成の検討も行っていく。

水素供給体制を構築 国内70%のシェアに

岩谷産業は、水素の可能性にいち早く着目し、1941年に水素販売を開始して以来、製造から輸送・貯蔵・供給・保安まで一貫した全国ネットワークを築いてきた。国内3拠点・6プラントの液化水素製造工場を建設し、その製造能力は年間1億2000万㎥に上る。また、全国10カ所に圧縮水素工場を保有しており、国内の水素市場において70%のシェアを持つ。

岩谷産業と川崎重工は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の未利用褐炭由来水素大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業において、豪州から日本に液化水素を輸送する国際水素エネルギーサプライチェーンの実証事業にも参画している。日本政府のカーボンニュートラル宣言や脱炭素社会の実現に向け、クリーンエネルギーとしての水素の普及拡大が求められる。こうした中、生成時のCO2排出のないグリーン水素の利活用に向け、社会実装の具現化を目指していく。

川崎重工業は、液化水素運搬船を運用している(写真提供:川崎重工業)