【特集3】安全に素早く正確な充塡 信頼の技術で世界トップ目指す

2021年3月4日

レポート/タツノ

昨年12月に発足した「水素バリューチェーン推進協議会」(JH2A)にタツノも名を連ねる。

エネルギー関連企業、各種メーカー、陸海運、ファイナンスなど業界を横断して88社(発足時)が参加し、社会実装プロジェクトの実現を通じて、早期に水素社会を構築することを目指す団体だ。

タツノはガソリン計量機を提供し始めて、今年で110年の老舗企業だ。新しいエネルギーの登場に合わせ、LNGやCNG(圧縮天然ガス)などの充填供給機も開発してきた。約20年前からは水素ディスペンサーにも取り組み、国内の水素ステーションでは50%を超える設置実績で水素供給インフラの構築に貢献している。

また、燃料電池車(FCV)への関心が高い北米のカリフォルニア州で、今や50%のシェアを獲得するまでの信頼を得ている。

「HYDROGEN-NX」セルフモデル

水素技術開発部の木村潔次長は「車両に入れるエネルギーが何になろうと、短時間で安全かつ正確に注入する装置をつくるというのがタツノのポリシーです」と、培った技術と信頼でFCVの普及にも貢献したいと話す。

世界随一の信頼と技術 水素社会の早期実現のために

タツノの水素ディスペンサー「HYDROGEN-NXシリーズ」は、①自社製の充塡ノズル、②世界最高レベルのコリオリ式質量流量計、③キャッシュレスのためのセルフ用POS外設機―の搭載が特長となっている。

①では、水素の特性により不具合が起こりやすい充塡ノズルを自社開発。メンテナンスの時間や費用の大幅削減を実現する。②のコリオリ式質量流量計は、質量流量精度±0・5%の高精度・低損圧の性能を発揮する。各国の防爆認証をはじめ、北米向け安全認証(ETL:Intertek)をノズルと共に日本企業として初めて取得した。③は、国内初で本体に搭載。セルフ式ガソリン計量機と同じ利便性が好評だ。

自社開発の充塡ノズル

水素は常温で液体を給油するガソリンと違って、82MPaの高圧でFCVに圧縮充塡する。ノズルは人が操作する部分なので、より高い安全性を求められる。タツノは、ノズル部分に取り付けた自社開発の赤外線通信受光部で車両のタンク情報を受信し、充塡を制御している。セルフ式の水素ステーションの普及をいち早く想定し、軽量化も図った。

昨年末、トヨタが新型ミライを発売した。タンクが3本になり容量が増えたことで、さらに短時間で充塡できる性能が求められる。

常務取締役の能登谷彰・営業本部長は、社会全体で水素の流通が増えて、その一部が車両用になるのがベストだと言い、「今後は大型車用のディスペンサーの需要も高まります。最終的に、液化水素を液体のまま充塡できれば、効率が上がりコストダウンにもつながるでしょう」と、新たな技術開発も視野に入れる。

「社会貢献の一つとして、全社を挙げて水素ビジネスを展開していきたい」と、水素社会の早期実現のために、JH2Aで積極的に取り組むとしている。