先駆者として風力に挑戦し続ける 地域との共生で事業を継続し発展

2021年3月12日

【Jパワー】

Jパワーの風力事業は、2000年に営業運転を開始した苫前ウィンビラ風力発電所から始まった。20年目を迎え、築いてきた地域との信頼と実績で事業を継続し、風力発電のさらなる発展に挑む。

1997年、民営化が決まったことを機に、Jパワーの風力発電事業への取り組みは始まった。数々の新規事業を検討する中で風力に着目したのだ。検討を開始した当時、国内に商用での大規模風力発電はなかった。

「水の力で培った発電技術があるなら、風の力でもできるのではないかという発想でした」と、再生可能エネルギー本部・風力事業部事業推進室の戸田勝也室長は振り返る。

先行する海外の風力発電を研究し、試行錯誤を重ねながら、技術者たちは力を結集。そして2000年12月に営業運転を開始したのが、北海道の苫前ウィンビラ発電所だ。20年が経ち、昨年8月、リプレース工事に着工した。

リプレース工事に着工した苫前ウィンビラ発電所

21年1月末時点で、Jパワーの風力発電設備は全国25カ所、稼働風車は300基以上に上る。出力合計は約58万kWで国内のシェアは第2位。全国の風力発電出力の15%を占める。これに加え、現在建設中および建設準備中、環境影響評価の手続き中の地点が10カ所以上ある。これら陸上での取り組みにより、国内トップシェアに躍り出る勢いだ。「25年度の再エネ出力100万kW増」の目標に向け、風力発電事業を加速させる。

洋上風力への挑戦 30 GW目標の実現を目指して

菅義偉政権は、昨年末の成長戦略実行計画で「40年までに洋上風力発電の設備容量を30 GWにする」(1GW=100万kW)との目標を掲げている。

一方で、Jパワーの稼働する25カ所の風力発電は、全て陸上風力だ。国内全体でも商用化されている洋上風力はほとんどない。

山や谷が多い日本は風が乱れやすく、今後は安定した風が吹く洋上風力が主流になるといわれる。設備も大型化しているため、海の方が運びやすいという利点もある。

Jパワーの風力発電設備一覧

こうした現状を踏まえて、Jパワーも今後は洋上風力に力を入れる。現在推進している国内の洋上風力は、①福岡県響灘、②北海道檜山エリア、③秋田県能代市、三種町および男鹿市沖―など計6カ所だ。

①の響灘は、現在事業化に向けて調査中であり、25年度の運転開始を目指している。②の檜山エリアは開発の可能性を調査中で、候補地は全長100㎞を超える。運転を開始すれば最大約72万kWの大規模電源になる。③の能代市、三種町および男鹿市沖は既に国の促進区域に指定されている海域だ。昨年11月から公募を開始しており、応札に向けた準備を進めている。

また、菅政権の掲げる30 GWの目標は、今後の浮体式洋上風力の必要性も示唆する。

着床式の洋上風力は、遠浅の海が続く欧州で主流だ。陸上と同様、風車基礎を海底に固定する。だが日本では、着床式に適した遠浅な海域は限られている。そのため、風車基礎を浮かべ、海底に係留する浮体式が適しているが、海外でも実証から商用を目指す段階だ。

戸田室長は、「ハードルは高いですが、Jパワーのこれまで蓄積してきた知見や技術力で挑戦していきたい。私たちの強みは、自社完結型で事業を検討・展開できる点です。風況や電気、土木に強いエンジニアがいる。私が所属する事業推進室はそれぞれの事業の方向性を示す重要な役割を負っています」と、自信を見せる。

事業推進室の戸田室長

地域と共生する風力発電 信頼を築きリプレースを実現

第1号の苫前ウィンビラ発電所を建設した時、初めての挑戦は成功ばかりではなかった。技術を磨き、地域の声に真摯に向き合い、信頼関係を築いてきた。そうした地道な取り組みがリプレースという事業継続につながったのだ。今後も複数の風力発電所でリプレースに向けた準備が進む。

「熊本地震の後、阿蘇にしはらウィンドファームではブレードを外して運転を中止した時期がありました。2年半後に風車が回り始めた時、地元の方から『やっと震災から復興したと思えた』との声をいただきました。既に地域に必要な景色の一部になっていたのがとてもうれしかった」(戸田室長)。地域と共生してきた発電所の証だ。

民営化後を見据えた新規事業として始まったJパワーの風力発電。全国2位のシェアとなり、カーボンゼロ達成の一翼を担うまでに成長した原動力は、20年間絶えることなく受け継がれてきた社員一人ひとりの情熱だ。

次は洋上風力だ。戸田室長は「未知な分野でも、できることを見つけていく。技術力を磨き、より高みを目指して期待に応えたい」と、エネルギー政策の一翼を担う気概を力強く示した。