脱炭素社会への展望がテーマ 電力のシンポジウムを開催

2021年3月18日

【公益事業学会】

識者で作る公益事業学会政策研究会(電力)のシンポジウムが1月18日に開催された。今回のテーマは、「電力自由化20年の検証と2050年への展望」。年初からの電力需給ひっ迫と、それに伴うスポット価格高騰のさなかの開催とあって、将来の安定供給に向けた電力システムの在り方についてさまざまな意見が噴出した。

初めに論点提起した山内弘隆会長(一橋大学大学院特任教授)は、「今回の電力需給ひっ迫を教訓に、どのような形でこの先の安定供給を維持していくのか。市場原理に委ねることの限界を認識した上で、詳細な政策、制度を考えていく必要がある」と強調した。

シンポジウムはオンライン形式で開催された(提供:電気新聞)

どう安定供給を維持するか 多角的観点から提言

基調講演した資源エネルギー庁の小川要・電力基盤整備課長は、①電源の投資回収、②再生可能エネルギー変動の調整、③イノベーション、④市場の機能―などを課題として挙げ、「自由化に伴い変化、変動が大きくなっていることを踏まえ、制度としてどのような仕組みを作るか。同時に、小売り、発電のプレーヤーが、どのような経営戦略を描いていくかも重要だ」と述べた。

続いて、12人の学識者、電力業界関係者が「マクロ制度設計」「競争設計」「発電投資・容量市場」「再エネ」「脱炭素」「イノベーション」といった多角的な観点から、現状の課題と最新の知見に基づく電力システムのあるべき姿を提言した。

最後に行われたパネルディスカッションでは、需給ひっ迫により足元の安定供給体制に課題が突き付けられた中、50年の脱炭素社会の実現に向けて電力システムをどう再構築するかが大きなテーマとなった。東京大学の高村ゆかり教授は、「脱炭素化を目指す上で、必要な供給力を維持しながら電源の差し替えをいかに円滑に進めるかという視点が、これまでの脱炭素議論の中で欠落していた」と指摘した。

聴講者からの「需給ひっ迫の原因は制度、プレーヤーのどちらにあるのか」「経営難に陥った新電力の支援は必要か」といった需給ひっ迫に関連する質問に対して登壇者からは、「プレーヤーをよくするのも悪くするのも制度。(安定供給の確保を)どこまで市場に任せ、どこまで政府が担保するのか長期的な議論が必要だ」(竹内純子・国際環境経済研究所理事)、「経営難に陥った新電力を支援してしまうと、リスクヘッジをしていた事業者が損をしてしまう。今後の制度設計にどう生かすかが、重要だ」(井手秀樹・慶応大学名誉教授)といった回答があった。