【特集2】7年越しの相馬プロジェクト 電気とガスの一大拠点に

2021年4月3日

石油資源開発と福島ガス発電が参画する相馬プロジェクト。LNG基地からは仙台広域圏へ天然ガスを供給。発電所は独自のトーリング方式で営業運転を始めている。

東日本大震災発生時、石油資源開発(JAPEX)が操業する新潟―仙台間(総延長約260㎞)のガスパイプラインが供給停止に追い込まれるような被害は受けなかった。だが、日本海側のガス田やLNG受入基地に加え、太平洋側にLNG基地を構えることで、天然ガスの供給安定性向上、特に仙台広域圏を中心とする太平洋側のパイプライン沿線の需要増などに対応できる強靭なインフラ構築が必要と考えたという。

基地を建設した相馬港は津波の影響を大きく受けた地点。ここに新たなエネルギー拠点を築き復興の起爆剤にしたいと期待する国や県の支援を受け、計画は始まった。

建設過程を振り返り、石井美孝電力事業本部長はこう話す。「LNGタンクは基地全体の工期短縮を図るため、LNGタンクでは従来工法に比べ、工期を10カ月短縮できるジャッキクライミングメソッド(JCM)工法を採用。発電設備では、実績がある形式に最新の要素技術を加えて高い発電効率を実現しました。いずれも経験のない当社なりの最短で確実な建設を意図したもので、結果として、いずれも当初の計画通りに完成し運用を開始できました」

新パイプラインが開通 仙台圏や沿線の地域活性へ

ガス供給面では、既存のパイプラインと接続する相馬・岩間間パイプライン(総延長約40㎞)が開通。仙台圏への安定供給を実現するとともに、沿線にある工場などへの供給が始まった。

発電所は運用会社の福島ガス発電(FGP)を15年に設立。JAPEXを含む5社が事業パートナーとして参画した。同社がユニークなのは、独自のトーリング方式というスキームを採用した点だ。出資各社が必要な電力量に応じたLNGをFGPに引き渡し、FGPはLNGに相当する電力に変換し引き渡す。複雑な運用と思われるが、「立ち上げ前にさまざまなルール設計をしっかり実施した結果、トラブルもなく運用できている」(石井本部長)。 発電所は営業運転開始から半年が経過する。注力しているのはコロナ禍においても安定的に稼働させること。これまで作業員から新型コロナウイルスの感染者は一人も出ていない。今後も細心の注意を払っていく構えだ。