【特集2】発電所の燃料需要増に対応 東日本を支える供給拠点

2021年4月3日

国際バルク戦略港湾に指定された福島・小名浜港。広野・勿来両火力で進むIGCCへの燃料供給、さらには次世代エネルギーの拠点として整備が進む。

東日本大震災で福島県の小名浜港は、震度6強の地震と高さ5・4mの津波に襲われた。その結果、大型クレーンの倒壊や、地盤の沈下、コンテナの流出、漁船が陸地に乗り上げるなど、計137の港湾設備が被害を受けたという。こうした背景もあり、小名浜港では「災害に強い港づくり」に向けた取り組みを行っている。

福島県小名浜港湾建設事務所の箱﨑寿文次長は、「災害対応に向けた取り組みは震災以前から行ってきました。特に、石炭などの荷揚げを行う5号ふ頭では、揺れや液状化に強い耐震強化岸壁を採用したことで、震災時も港湾機能を維持することができました。現在整備を進めている東港地区のふ頭も耐震岸壁を採用するなど、ハード・ソフトの両面で災害対策を進めています」と説明する。

IGCCの需要増に対応 供用しながらの難工事

小名浜港では震災からの復旧という難題に加え、港の南北に位置する広野発電所と勿来発電所の稼働率が高まったことで、港湾で取り扱う石炭の量が増加。世界的に船舶が大型化したことで接岸できる岸壁が足りず、接岸を待つ貨物船舶が沖合に停泊する問題が慢性的に生じていた。

このため小名浜港は13年に大型船による大量輸入を行える特定貨物輸入拠点港湾に指定され、かねて進められていた港内の人工島・東港地区の整備が本格化、この工事に際しては多くの苦労があった。

東港地区が急ピッチで進む中、広野・勿来の両火力で次世代型石炭火力、石炭ガス化複合発電(IGCC)建設が決定。石炭需要の大幅増に対応するためにも、東港地区全体の整備が完了する前にヤードを供用させる必要があった。箱崎次長は「勿来IGCCの試運転に合わせて一部設備を供用するため、発電事業者とも調整をしながら工事を進めました。設備を前倒しして運用することを前提に工程を考えるなど、通常と比べて特殊な工事でした」と話す。

19年12月には供用設備が完成し、20年3月には石炭船の受け入れと野積場の使用、勿来発電所へのトラック輸送が始まった。現在は、広野IGCCに向けて内航船が着岸できるようヤードの整備を行っており、22年3月には東港地区の整備が完了する予定だ。こうした設備ができることで、石炭取扱量は約1000万t(19年実績)から、約1500万~1600万tまで増強できるという。

また国土交通省はアンモニアや水素を取り扱う「カーボンニュートラルポート」の検討港に小名浜港を指定している。港の今後について箱崎次長は「中長期的には石炭のみではなく、水素やアンモニアなどの新しい燃料にも取り組みたい」と語った。 これまでもこれからも、小名浜港が果たす役割は大きそうだ。