【特集2】独自にインフラ強化推進 LPガス式非発を開発・販売

2021年4月3日

災害の度に存在が注目される分散型エネルギー、LPガス。震災後、岩谷産業ではインフラ機能の強化を推進。独自基準に基づく「基幹センター」整備に取り組んだ。

現在、国が定める「LPガス中核充填基地」の原点になったといえるのが、岩谷産業によるLPガスの三次基地『LPG基幹センター』の設計思想だ。岩谷は震災を契機に、災害にも強い充填基地について、全国に先駆けて独自に整備。非常用発電設備(非発)の導入、衛星電話の設置、タンク類の耐震強化など独自基準で充填基地の強靭化を進めてきた。現在、同社が保有する全国のLPGセンターのうち53カ所を基幹センターとして整備を完了した。

この整備の端緒ともなった充填基地が被災の地、仙台市にある。当時、仙台支店でマルヰガス・石油部の職にあった伊藤友一さん(現・マルヰガス部担当部長)は当時をこう振り返る。「仙台センターには運良く重油式の非発が設置されていて、震災時でも稼働しました。これで安定的にLPガスを供給できると思いました。日頃から非発をしっかりと管理しておいて本当に良かった」

輸入基地からのLPガス調達に多少の時間はかかったものの、それでも震災2日後にはLPガスの供給を再開。充填基地にタクシーが列を成した光景は今でも覚えているそうだ。そんな仙台で得られた経験を基に、社内で生まれた発想が「基幹センター化」だった。

もう一つの教訓 燃料多様化の非発

教訓はもう一つある。それは「非発の多燃料化」だった。それまで「非発燃料=石油」が一般的だったが、災害に強いLPガスも燃料に加えよう―。そんなアイデアから生まれたのがLPガス式の非発だった。メーカーのデンヨー社と共同開発に着手し、2012年には販売を開始した。岩谷の「マルヰ会」などを含めた販売組織によって、19年度までに1000台以上を販売した。医療や介護施設を中心に導入提案しており、施設運用のBCP(事業継続計画)を支えるアイテムとして活躍中だ。

そんな岩谷では基幹センターのレジリエンス強化を推進中だ。19年秋に東日本を襲った台風被害では、河川の氾濫で水害を受けた基地もあった。「自治体公開のハザードマップを見比べながら浸水が想定されるセンターを割り出し、非発のかさ上げを進めました。加えて高性能のカメラを設置して遠隔監視する『次世代保安システム』を21年度より全センターに導入を計画しています」(同) さまざまな災害を教訓に、継続的なレジリエンス対策によってLPガスの安定供給を支えていく。

震災後開発したLPガス式の非常用発電設備の画像