【特集2】被災者受け入れを支えた地冷サイト 設備更新で環境性能とBCPを強化

2021年4月3日

さいたま新都心地域冷暖房センター

さいたま新都心地域冷暖房センター

東日本大震災に伴い、原発が立地する双葉町の住民ら約2000名は3月19日、さいたまスーパーアリーナに一時避難した。

避難所になったさいたまスーパーアリーナに温水や暖房などに使う熱供給を継続していたのが、東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)が運用する「さいたま新都心地域冷暖房センター」だ。

さいたま地冷は、 同社が保有する地冷設備の中で、世界最大級の新宿に次ぐ大きなプラント。さいたま新都心地区は旧国鉄の操車場だったが、一帯の再開発が行われた折に地冷拠点も整備された。主な需要家はさいたまスーパーアリーナや合同庁舎、医療施設など13カ所(2021年4月時点)。各施設に熱供給を行っている。

震災当時、あらかじめ策定した計画に沿って電力供給をストップさせる「計画停電」が3月14日から実施された

その際、さいたま新都心地区の一部も計画停電の実施区域に指定され、さいたま地冷も各約4時間・計4回にわたり停電を経験したそうだ。そうした中、さいたま地冷は常用のガスタービンCGS(コージェネレーションシステム)を計画停電の前に系統から切り離した上で自立運転し、その電力でボイラーなどを運転。避難場所のさいたまスーパーアリーナへの熱供給を継続した。

 さいたま地冷の宮原忠人所長は、「震災当時、商用電源が停電しているので、『想定外のことが起こるかもしれない』ということを常に念頭に置きながら対応した、と当時の所員から聞いています」と話す。また未曾有の災害を経験したことが、後の設備更新時に反映されたという。

大型ガスエンジンの導入 発電出力は7000kW級

TGESは20年9月、開設から約20年を迎えるにあたって実施された、さいたま地冷のリニューアル工事を完了したと発表。7800kWの大型ガスエンジンに加え、4.1t時の排ガスボイラ、1250RTの電動ターボ冷凍機6式、390RTの排熱回収温水吸収式冷凍機1式を新たに導入。これにより年間約25%、およそ5600tのCO2削減を実現し、環境性能が大幅に向上した。

また今回のリプレースについて、宮原所長はこう説明する。「震災の経験を生かしており、計画停電を経験したことで設備のBCP機能を向上させることが一つテーマとなりました。大容量のCGSをブラックアウトスタートできるよう設備を改良したことで、冷温熱の需要ピーク時に災害が起きても通常通り供給できるよう設備を更新しました」

建屋の地下にはCGSや冷凍機の冷却に用いられる貯水槽が設置されており、火災などが起きた際には貯水槽の水を消火に利用することで消防局と提携を結んでいるという。 最大3万5000人を収容する全国でも屈指の規模を誇るさいたまスーパーアリーナは、コンサートホールとしての役割に加え、防災活動拠点として地域を守る側面もある。

今後来るかもしれない大型災害にも備えられるよう、TGESは設備を有効活用し地域と連携しながらエネルギーの安定供給を守っていく。

昨年更新したガスエンジン