豪雪地域で太陽光のある生活 冬の発電量で意外な結果

2021年5月15日

【太陽光生活研究所】

長野県最北部に位置する飯山市は日本でも有数の豪雪地域だ。年間の最深積雪平均は平地で176㎝、山間部では350㎝にも達する。豊富な積雪によって、市内には戸狩温泉、斑尾高原などのスキー場、飯山駅近くにはスキーのジャンプ台もあるなど、ウィンタースポーツの施設が点在する。

豪雪地帯に建てられた太陽光生活研究所

2020年春、スキー関連書籍の編集者である尾日向梨沙さんは同地に移住した。尾日向さんは、冬のシーズン中は取材活動に、オフになると編集作業に取り組み1年を過ごす。「元々、雪国で毎日スキーができる環境を望んでいたこともあり、山に囲まれ、季節を感じ取れる飯山が気に入り移住することにしました」と話す。

移住するに当たって、家を新築した。こだわったのが、環境負荷が少ないエネルギーを使った住まいだ。ここ最近の取材活動で、雪国では積雪が大幅に減少したり、突然の大雪に見舞われたりなど、極端な気候が続き、温暖化を意識するようになった。

「自然の中に身を置き、変化を感じ取ることが多かったです。その経験から、環境負荷の少ない生活を送りたいと考え始めました」(尾日向さん)。建設では基礎工事を工務店に任せ、壁塗りや棚づくりなど内装は自分たちで施工した。合わせて、太陽光や蓄電池を設置し、可能な限りエネルギーを自給自足したいと考えた。

家の壁面に太陽光を設置 安定出力を得るため工夫

そうした中、デルタ電子が太陽光発電設備を設置するモニターを探していることを聞きつけ、尾日向さんは手を上げた。だが、飯山のような豪雪地域では、屋根への太陽光発電の設置は雪の重みに潰されてしまうため不可能。そこで考えたのが壁面への設置だ。事業所などの金属用の架台を応用し、壁面に取り付けた。屋根ほどの面積が確保できない分、東南面と南西面の2面に取り付けている。こうすることで、日の出とともに出力が上昇し、1日を通じて安定した発電量を得られる。

尾日向梨沙さん(右)とパートナーの健さん

太陽光発電は昨年秋に稼働を開始し、本格的な冬を迎えた。同年末の記録的な大雪を経て、数カ月間で分かったのは、①付着した雪はパネルの急角度と流れる電流で溶けて落ちること、②雪が降る日も日によって発電すること、③天気が良い日は夏よりも発電することだ。今年2月6日には最高の発電量29 kW時を記録した。 尾日向さんは飯山に移住して1年が経とうとしている。今後、オフグリッドでの生活を視野に入れており、電気自動車など、新たな設備導入も検討している。