KDDIと5G共同検証を開始 業務効率化とレジリエンス強化へ

2021年6月11日

【中部電力】

2020年3月に運用が開始され、利用エリアが拡大する第5世代移動通信システム(5G)。昨今は対応モバイル端末やIoT機器が続々と登場し注目を集める。

本格的5G社会の到来に先駆け、中部電力はKDDIと共同で、5Gを活用した遠隔監視などの共同検証を20年10月1日から21年1月21日まで行った。

常に安定した供給が求められる電力業界において、「現場業務のさらなる安全確保や効率化」「災害発生時の迅速な設備復旧」などは常々課題となっている。中部電力パワーグリッドでは改善施策の一つとして、変電所の現場業務について、ロボットによる遠隔監視・診断などの開発に取り組んできた。その中で、従来の無線による遠隔操作ではリアルタイムでの操作が難しいという課題が挙がっており、大量かつ低遅延な情報伝送が求められていた。

「高速・大容量」「低遅延」「多接続」といった特性を持つ5Gにかかる期待は大きく、業界に先駆けて今回の検証が行われた。

巡視ロボットを遠隔操作 データの送受信を確認

今回の検証では、中部電力パワーグリッド大高変電所と中部電力技術開発本部先端技術応用研究所の2拠点に5G環境が構築された。変電所の実環境における通信性能の検証を行うとともに、①遠隔からの巡視ロボット運転操作、②高精細カメラやスマートグラス(SG)による遠隔監視と作業支援、③マルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)活用によるAI分析―など、実運用を見据えた検証が実施された。

5Gを活用した検証のイメージ

①では、中部電力と三菱電機で共同開発中の巡視ロボットが投入され、5Gを活用した遠隔運転操作とその検証が行われた。ロボットアームを操作することにより視点の移動が可能であり、リアルタイム性が上がることで、より人に近い巡視が可能となる。

②では、現場作業者が装着したSGの視界を、遠隔にいる作業指示者と高精細映像で共有するとともに、作業指示をSGの画面上へ同時並行して表示させた。これにより、リアルタイム性が要求される遠隔からの作業支援の有用性が検証された。

③では、通信端末に近い場所にサーバーを配置することで通信の遅延時間を短縮させる技術であるMECを活用した、ストリーム映像のAI分析が行われた。

今回の検証を通して、5G環境により高精細映像や画像などのデータが安定的に送受信できることが確認された。検証場所では、検証終了後の2月以降も追加的なデータ取得などを継続している。今後も両社は5Gを活用し、現場業務の効率化とレジリエンス強化に向けた取り組みを推進していく構えだ。