石狩LNG基地でCNLNG受け入れ事業活動全体のCO2排出量10%削減

2021年6月13日

【北海道ガス】

北海道ガスは3月、石狩LNG基地でカーボンニュートラルLNGを受け入れた。

菅義偉首相の宣言によって加速する脱炭素化に対する施策の一つとして注目が集まる。

3月19日――。北海道ガスの石狩LNG基地に一隻の大型LNG船がサハリンから入港し注目を浴びた。CO2排出量が実質ゼロのカーボンニュートラル(CN)LNGを積んでいるためだ。

今回、北ガスはCO2クレジットでカーボンオフセットしたLNGを三井物産から購入。受け入れたLNGは約6.4万t、同社の年間取扱量の10%に相当する。

北ガスは従来、低炭素化に向けた取り組みを進めてきた。エコジョーズやガスマイホーム発電といった高効率ガス機器の促進やガス導管の拡充など、天然ガスの普及拡大を着実に推進。加えて、石狩LNG基地内の「北ガス石狩発電所」と同社本社ビル地下の「北ガス札幌発電所」の合計10万9200kWの電源を中心とした分散型を整備するとともに、道内の間伐材を用いた木質バイオマス発電や、太陽光発電など再生可能エネルギーの活用、地産地消のエネルギーモデル構築に向け道内自治体と連携した取り組み、さらにエネルギーマネジメントシステム(EMS)を活用した省エネ、など多岐にわたる。

そうした中、菅義偉首相が昨年10月、2050年CNを宣言した。これを受けて、日本ガス協会は昨年11月に「CNチャレンジ2050」を発表。脱炭素社会に向けて業界目標を掲げた。金田幸一郎・経営企画部長は「これまで進めてきた低炭素化の取り組みを、さらに加速させる施策の一つとして、CNLNGを導入しました。国や業界が掲げるCN目標達成にも貢献していきたい」と話す。

商社からクレジット購入 21万t分のCO2に相当

CNLNGは、天然ガスの採掘から液化、輸送、都市ガス製造、消費に至るまでの工程で発生するCO2を、クレジットでカーボンオフセットしたものだ。今回、北ガスが受け入れたLNGは21万t分のCO2に相当する。世界的に信用性の高い認証機関が森林育成や森林保全プロジェクトにおけるCO2排出削減効果をクレジットとして認証したものを、三井物産を通じて購入した。

② CNLNGの導入目的と活用

今回、北ガスではCNLNGを同社のガスや電気など、総合エネルギーサービス事業全般で活用する。これにより、北ガスの事業活動におけるCO2排出量全体の10%を削減する。「CNLNGを事業全体で使用することで、当社の低炭素社会構築に向けた取り組みを広くお客さまに知っていただくという側面もあります。脱炭素化への取り組みを一層加速できたらと考えています」。金田部長はそう説明する。

この動きに早速反応する需要家がいた。業務用の大型物件などでガスを利用する企業の総務やCSR担当者などだ。原料企画室の矢本令子主査は「CNLNGを『自社の脱炭素化への取り組みに利用できないか』といった問い合わせを多数いただきました」と反響を語る。

ただ、今回のCO2クレジットは国内の省エネ法や温対法などの報告義務が課されているCO2排出量の相殺にカウントされない。環境価値を正しく評価する制度への改善がなされることで、国内におけるCNLNGの利用拡大が見込まれる。

また、ガス協会の「CNチャレンジ2050」には30年5〜20%削減という中間目標がある。今回のCNLNG導入は、その達成手段として有効なものだということも分かった。

カーボンニュートラルLNG6.4万tを積んだ「OB RIVER」

一方、CO2クレジットの調達には課題もある。脱炭素化への機運の高まりによって価格が高騰していく可能性がある。このことから、CO2クレジットの安定的な調達については、検討の余地がありそうだ。

北ガスでは、今後もCNLNGを調達するかは検討中という。「導入の効果をあらゆる点から検証しています。お客さまからのニーズはもちろんのこと、制度面でCNLNGの有効性が認められるかといった動向も注視しており、CO2クレジットへの知見を深めていきます。CNLNGをはじめ、さまざまな取り組みにより、北海道の持続可能なエネルギー社会の実現に寄与していきたい」(金田部長)と語る。

道内に多く賦存する再エネ 有効利用の取り組みを加速

脱炭素化に向けては、まず省エネや高効率機器の普及によって、CO2排出量を減らすことが不可欠だ。このため、北ガスでは、前述の低炭素化への取り組みと今回のCNLNG導入など新たな施策を組み合わせていく。

特に、積雪寒冷地における省エネと道内に多く賦存する再エネの活用は脱炭素化の大きな鍵を握ると北ガスではみている。既に展開中の独自開発の家庭用EMS(HEMS)に加え、今年度参入する住宅賃貸事業で家庭向けの省エネの知見を深めるとともに、太陽光や風力、地熱、水力といった資源の有効利用の取り組みを加速するため、自営線を利用したマイクログリッドの活用も検討していく方針だ。