LPや機器販売などで売り上げ拡大都市ガス事業の業績を補う

2021年6月15日

【常磐共同ガス】

福島県の浜通りに位置する常磐共同ガスは、顧客数1万6000件規模の都市ガス会社だ。東日本大震災では、地震や津波で大きなダメージを受けたのと同時に、福島第一原子力発電所の事故の影響も重なり、復旧に多くの時間を要した。復旧が思うように進まなかったときには、事業継続を危ぶむ意見もあったという。そうした困難を乗り越えて、現在、同社は売り上げを急拡大させている。

相双営業所の新社屋(上)とデポ基地

主力の都市ガス事業は厳しい状況にある。少子高齢化や人口減少が進む中、新型コロナウイルスが需要減少に追い打ちをかけたのだ。地元の商業施設や温泉旅館などが、大きな影響を受けた。業務用途では、いわき市医療センターで2019年に開始したエネルギーサービス事業や施設管理を手掛けている。ここでの知見をほかの施設でも活用していくなど、新たな需要拡大の施策を検討している。

震災以降はさらなる成長のために、他事業に従来にも増して注力している。その一つがLPガス販売だ。いわき市には被災者や避難者向けの仮設住宅や公営の復興住宅が建設された。原発避難区域を中心に、避難する住民の流入に伴い、居住する世帯が一気に増加した。金成義順・供給部長は「地域によっては人口が2〜3倍増えたと思います。コンビニはいつも混雑し、歯医者は1〜2カ月先まで予約が取れないほどでした」と当時を振り返る。

LPガス需要も急激に増え、顧客数は1万件にまで達している。現在、同社ではいわき市周辺から浜通りを中心に営業エリアを拡大中。昨年には、LPガス配送拠点機能を有する相双営業所(福島県広野町)と、南相馬営業所(福島県南相馬市)の新社屋を相次いで開設している。

エコキュートなども販売 水素設備の施工にも挑戦

家庭用エネルギー機器販売も好調だ。ガス機器にこだわらず、エコキュートやIHコンロなども手掛けている。「これまでも低炭素社会を念頭にエネルギー機器販売戦略を考えてきましたが、昨年10月の菅義偉首相のカーボンニュートラル宣言の影響は大きくなるとみています。長期的に展望していくと、多くの商材を手掛けていく必要性を改めて感じました」と金成部長は語る。

このほか、水素など新エネルギーへの挑戦にも前向きだ。同社は昨年7月に運転開始となったJヴィレッジ(福島県楢葉町)に設置された東芝エネルギーシステムズ製の純水素燃料電池システム「H2Rex」の工事を担当。こうした活動にも積極的に取り組んでいく構えだ。