【特集2】狙うはエネルギー界のBtoB版アマゾン 機器受発注業務をアプリで一括管理

2021年10月3日

【日本瓦斯】

ニチガスは受発注管理をペーパーレス化するアプリを開発した。事業者・メーカー業務の高効率化で、業界のDX化を図っていく。

ニチガスは、LPガス事業者およびガス機器メーカー向けの製品受発注システム「タノミマスター」をリリースしている。このアプリは、ガス機器を導入する際に発生する受発注など、これまでメールやFAX、電話で行われていた一連の業務を一元管理しペーパーレス化する。今後は決済、請求書送付機能の実装を予定しており、事業者・メーカー双方で発生する、無駄な販売管理コストを削減する。

アイデアを考えたのは、同社の和田眞治社長。営業時代に自身が体感した、非効率な業務を改善できないかということが発想の原点にあった。和田社長は「BtoB向けのアマゾンを目指しています」と説明する。

タノミマスターの画面例

事業者間のやり取りを削減 ペーパーレスで業務効率化

ガス事業者がガス機器を受注する際、事業者とメーカーの間には大まかに、①メーカーの営業担当に発注、仕切価格を電話で交渉、②発注書類を作成しFAXやメールで送信、③納品日時の連絡、④請求書を作成しFAXやメールで送信―という工程が生じる。

事業者とメーカーが直接取引をする場合は工程数が少なくなるものの、その中間に卸業者がいる場合、メーカー、事業者双方の間のやり取りが増えるため余計に時間がかかり、さらに中間マージンが生じてしまう。

ガス機器メーカーも、在庫管理や総務などバックオフィス部門で受発注管理の作業が常に行われるなど、ガス事業者・卸業者・メーカー間で行われる業務は何かと煩雑だ。和田社長は「どの企業も手作業で行われる非効率な業務が多い。これが会社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を図る上での阻害要因になっている」と指摘する。

アプリにはリンナイ、ノーリツ、パロマ、パーパスなどの大手メーカーが参加しており、各社の製品をアプリ上で注文できる。

さらに、発注に加え納期の連絡、請求書の受け渡しを行えるほか、価格もガス事業者と機器メーカーで取り決めた、仕切価格に沿って設定させることも可能。今後は決済機能も実装していく。口頭やFAXで行われていた従来の業務を、完全にペーパーレス化することで受発注業務を効率化する。

ガス事業者だけではなく、機器メーカーにもメリットがある。紙ベースだった発注書類がペーパーレス化、電話やFAXのやり取りが減り、バックオフィス業務も少人数で済む。またアプリに参加することで、自社製品をウェブで受注するための社内システムを一から構築する必要もないなど、販売管理コスト低減にもつながる。

ラインアップ拡充も検討 修理・工事向けアプリも

データは、ニチガスが構築するブロックチェーンとX―Roadと呼ばれるエストニアの技術で安全に管理されるため、個社間で取り決めた仕切り価格などの情報が、ニチガスをはじめとする第三者に漏れる心配はない。

現在、アプリには前述の主要ガス機器メーカーに加え、ガスメーターメーカー、バルブメーカーが参加しており、今後は容器、工事機器などガス関連資機材に加え、キッチン回りの商材やエアコンなど、LPガス以外の商材も扱っていく考えだ。

さらに、同社はガス事業者と機器メーカーの受発注だけでなく、同アプリをベースにしたガス機器の工事依頼向けに「工事タノミマスター」、修理依頼向けに「修理タノミマスター」、機器の見積もりを行う「ミツモリマスター」などの関連アプリもリリースしている。業務全体のペーパーレス化に資するシステム開発を鋭意進めている。

「エネルギー業界の在り方が激変する中で、電力・ガスなど業界の境界がなくなりつつある。今後は事業者同士が共創することが大事で、タノミマスターをはじめとする当社の事業を、エネルギー業界のシェアリングエコノミーのツールとして、多くの事業者に活用してもらいたい」。和田社長はこう期待する。

DXプラットフォームの共創の輪を広げ、LPガス業界の業務改革を進めていく構えだ。