【コラム/9月27日】脱炭素社会実現に求められる「人材の流動化」と「若手育成」

2021年9月27日

渡邊開也/リニューアブル・ジャパン株式会社 執行役員 管理本部副本部長兼社長室長

 第六次エネルギー基本計画の素案が今年の7月に公表され、2030年度の総発電量のうち再生可能エネルギーで36〜38%賄うことが示された。資源エネルギー庁から9月に公表されている「エネルギー基本計画(案)の概要」には、全体像として(スライドp.4)

・2050年カーボンニュートラル(2020年10月表明)、2030年度の46%削減、更に50%の高みを目指して挑戦を続ける新たな削減目標(2021年4月表明)の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すことが重要テーマ

・同時に、日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服が、もう一つの重要なテーマ。安全性の確保を大前提に、気候変動対策を進める中でも、安定供給の確保やエネルギーコストの低減(S+3E)に向けた取組を進める

・エネ基全体は、主として、

①東電福島第一の事故後10年の歩み

②2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応

③2050年を見据えた2030年に向けた政策対応のパートから構成

と記されている。

 さらに、③2050年を見据えた2030年に向けた政策対応のパートから構成には、2030年に向けた政策対応のポイント【再生可能エネルギー】というスライドがあり、「S+3Eを大前提に、再エネの主力電源化を徹底し、再エネに最優先の原則で取り組み、国民負担の抑制と地域との共生を図りながら最大限の導入を促す」とある。

 その具体的な取組として、地域と共生する形での適地確保、事業規律の強化、コスト低減・市場への統合、系統制約の克服、規制の合理化、技術開発の推進と記されている。

 どれも至極当然のことだと思うが、そこにもう1つそれらを実現するために必要なこととして、「人材の流動化」と「若手の育成」を加えてみてはどうだろうか。

 これまでの電力システムは、大規模な発電所で大量の電気を発電し、遠距離送電により首都圏などの消費地に届けるという、いわゆるBER(大規模系統電源)ある。従い、発電所の維持管理する電気主任技術者等の人材もおのずとその発電所を所有する会社に集まっていることになる。

 それが今後は、再エネをはじめとしていわゆるDER(分散型電源)になっていくならば、設備というハード面の分散化だけでなく、そこに関わる人材というソフト面も分散化していく必要があるのではないだろうか?

 加えて、それらの人材の担い手は高齢化しているという現状の中、将来を担う若手にそのノウハウを移転していく必要があると思う。具体的にはいわゆる電力会社などで定年間近の現場経験豊富な技術者の方々が、セカンドキャリアとして太陽光発電所などの再エネ発電事業者で活躍するという人材の流動化や、地方の大学・高等専門学校等を卒業した人材、特に女性の活躍する場として、また新卒採用の方々が就職先の選択肢として再エネ業界で働くということを考えてもらうようになることが大切になってくると考えている。

 それらを通じて現場技術者を育成し、地元で長期間、安定的に働くことで、再エネ主導の脱炭素社会の実現を目指すことを考えていくのが良いのではと思う。

 特にこのコロナ禍で先行き不透明な中、電気というエネルギーは誰もが利用するもので、その業界を支える人材というのは、若手や学生にとって魅力的に思えるものではないだろうか?

※出典:エネルギー基本計画(案)の概要」

https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/opinion/data/02.pdf

【プロフィール】1996年一橋大学経済学部卒、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2017年リニューアブル・ジャパン入社。2019年一般社団法人 再生可能エネルギー長期安定電源推進協会設立、同事務局長を務めた。