新桂沢・熊追発電所が来春運転開始 100年続く水力発電所を目指す

2021年10月5日

【Jパワー(電源開発)】

北海道内初の多目的ダムである桂沢ダムのかさ上げに伴い、大規模改修を行う桂沢・熊追発電所。

厳しい自然環境の中、2022年の運転開始を目指して、安全を最優先に着実に工事を進めている。

桂沢系発電所の位置

 北海道のほぼ中央にある三笠市を流れる石狩川水系・幾春別川の上流に、桂沢ダムがある。有効貯水容量は8180万㎥。治水、かんがい、上水道、工業用水、発電を目的とした道内初の多目的ダムだ。1957年にJパワーがこのダムの上流に熊追発電所を、下流に桂沢発電所を建設して電気を供給し、60年以上にわたって地域の産業や生活基盤を支えてきた。

桂沢ダムでは完成後に繰り返し起こった洪水被害に対応すべく、北海道開発局がダムのかさ上げをし、貯水量を増やして治水機能を向上させる工事を行っている。国で行っているダム事業では初めての同軸かさ上げダムで、11・9mのかさ上げ後は高さ75・5m、総貯水量は1・6倍になる。

Jパワーはこれに合わせ、ダムの上流にある熊追発電所をかさ上げし、設備の更新を行っている。高経年化した水路の補強と補修、水車発電機1台と屋外開閉設備の更新などを行い、出力は4900kWから5100kWに増加する。

敷地のかさ上げに伴い建屋を新設(熊追発電所)

ダムの下流に位置する桂沢発電所は、貯水位の上昇により有効落差が大きくなる。水車発電機2台、屋外開閉設備などを更新するほか、調圧水槽のかさ上げや水路の補強と補修を行って、新桂沢発電所として生まれ変わり、出力は1万5000kWから1万6800kWに増加する。

2018年に熊追発電所から始まった両発電所の工事は既に7割以上が終了し、熊追発電所は来年4月、新桂沢発電所は同6月の運転開始を目指している。

発電機回転子の吊り込みを実施(新桂沢発電所)

近年の三笠市は夏場の気温が高く、作業では熱中症対策が欠かせない。土地柄、ヒグマ対策も行う。一方、冬は気温がマイナス20℃近くになり、積雪は1・5mを超える豪雪地帯でもある。屋外工事が中心であった2年前までは冬場を休工としていたが、昨年は冬場も一部の屋内工事を継続した。記録的な豪雪があり、大雪に見舞われた日は、道路を除雪するショベルローダーの後ろに列をつくって現場に向かうこともあった。
「道外から赴任してきた所員は雪の多さと寒さに面食らうが、全員一丸となって頑張っている」と、新桂沢建設所総務グループの青柳智士グループリーダーは話す。
現場に通う所員の安全を守るため、工事関係者からの情報を集約し、道路横法面の積雪の亀裂や吹雪、ホワイトアウトなど危険箇所の情報を共有している。最近はドローンを使って上空から雪崩の状況を確認しており、安全に危険箇所を把握することができている。
「安全はすべてに優先する」を工事関係者全員が心掛け、無事故無災害で工程通りの完成に向かって歩を進めている。

次の世代へ技術を継承 100年続く水力発電所へ

更新工事は技術継承の貴重な場としての役割も担っており、新桂沢発電所と熊追発電所の工事でも、幅広い年齢構成の所員が携わっている。またOJTを通じて建設経験が少しでも身に着くよう新入社員が短期間、研修生として配属される。厳しい自然条件の中で、先輩たちの後姿を見ながら土木建築の大規模補修や、水車発電機更新のノウハウを勉強している。
培ってきた技術とJパワーのマインドは確かに受け継がれ、今後の水力発電所の更新工事にも生かされていくだろう。
運転開始まであと半年。新桂沢発電所と熊追発電所は、確かな技術で、100年続く水力発電所を目指し歩んでいく。

【インタビュー】

安全第一で再エネを拡大 地域とともに歩む

――新桂沢・熊追発電所の位置付けは。

河田 2050年のカーボンニュートラル(CN)実現に向けて今年2月、Jパワーは「ブルーミッション2050」を発表しました。発電事業でのCN実現に、再生可能エネルギーである水力発電は重要な役割を担います。今回の大規模更新工事により、両発電所は発電出力が増加します。

――工事が佳境を迎えています。

河田 水車発電機3台同時の更新はJパワーとして初めてのことです。これから運開までは水車発電機の組立や試験が中心になり、工程や人員の点で厳しい局面もありますが、所員一丸となって頑張っています。両発電所は、岩見沢の事務所から車で30分~1時間程度離れています。ここは豪雪地帯の上、一部林道を通行するので、移動途中の雪崩や交通事故が特に心配です。運開まで無事故無災害、安全第一で力を合わせていきたいです。

――地域共生の考えについてお聞かせください。

河田 60年以上事業を続けられたのは、先輩方が地域の皆さんと友好な関係を築いてきたからです。秋の「みかさ桂沢もみじまつり」では、例年発電所の見学会を行っていました。新型コロナウイルスの影響で、地域の行事が中止になり交流の機会が減っていますが、状況が落ち着いたら、新しい発電所と新しいダムをセットで見ていただけることを願っています。2月には所員が三笠市の雪かきボランティアに参加して、高齢の方が住む家や市の施設の雪かきを行います。

これからも地域の皆さんと共に歩んでいきたいと思っています。

河田暢亮(新桂沢水力建設所 所長)