脱炭素時代の電力安定供給がテーマ 国際ワークショップをオンライン開催

2021年10月13日

【公益事業学会】

 学識者で作る公益事業学会政策研究会(電力)は9月13、27日の2日間にわたって、「電力政策・市場の3つの最新トピック」をテーマに国際ワークショップをオンライン形式で開催した。

ワークショップでは、①脱炭素・再エネ拡大下の安定供給システムの強化、②RE証書の在り方とカーボンプライシング、③再エネ増加下のフレキシビリティの活用と政策革新―の三つをテーマに、政策担当者、学識者、電気事業者らが、現状の課題を踏まえ、将来の電力システムの在るべき姿について意見を交わした。

脱炭素と安定供給は両立できるのか

①のセッションでは、1月の需給ひっ迫で顕在化した供給力不足の課題を解決するためには、バランシンググループ(BG)制度による安定供給確保の仕組みの見直しを含め、現状の課題に合わせた大胆な改革が必要だといった意見が事業者や学識者から相次いだ。

これに対し、資源エネルギー庁の筑紫正宏電力供給室長も、「責任感に支えられた制度が持続可能なのかという課題を突き付けられている。真摯に見直していく必要がある」と応じ、不断の改革が必要だとの認識で一致した。

脱炭素化の進展に伴い、いかにコストを抑制しながら安定供給を確保していくかが大きな課題となる。イーレックスの本名均社長は、「自由化と脱炭素化をどう両立させるかは、これからの電気事業制度の命題。事業者にセーフティネットを保証する必要はなく、国民に安定的かつ低廉な電気を供給するという電気事業の基本を全うできる仕組みにしていただきたい」と、先の冬の市場高騰に伴い、一部の事業者を保護するべきだとの議論が浮上したことを念頭に、制度設計への注文を付けた。

また、東京電力ホールディングス経営技術戦略研究所経営戦略調査室の戸田直樹氏は、「限界費用ゼロの再エネが増えれば、発電コストに占める固定費の比率が高まるためエナジーオンリーマーケットの価格シグナルだけで投資を誘導するのは難しい。発電分野は競争領域でよいのかという観点で、議論する必要があるのではないか」との問題意識を提起した。

RE証書の意義とは 「追加性」を問題視

②では、FIT電源の非化石価値を対象とする再エネ価値取引市場に「追加性が期待できない」ことで、その意義を疑問視する意見が大勢を占めた。英国から参加した再エネの電源証明を推進するNGO団体、エナジータグのフィリップ・ムーディ氏は、欧州におけるRE証書の先行的な取り組みを紹介。その上で、「再エネのみならず、全ての電源のトラッキングを検討するべきで、その上で追加性を証明できればプレミアムを上乗せし新規の設備投資に回すという考え方もできる」と述べ、目的の達成に向けた柔軟な制度の見直しの必要性を強調した。