【特集2】CO2回収設備のニーズ急増 自治体連携で脱炭素時の地産地消を支える

2021年11月3日

【三菱化工機】

業界からCO2回収設備の問い合わせが増加中の三菱化工機。自治体の下水処理場ではメタンを製造して地産地消を支える。

都市ガス向けのガス製造プラント、LNGプラント、熱量調整設備、石油精製向けの硫黄回収設備など、これまで数多くのエネルギーインフラ設備を納入した実績を持つ三菱化工機。同時に水素製造装置、水素ステーション、CO2回収設備などCN時代を支えるアイテムも手掛けている。そんな同社にとって、いま大きな変化が起きている。

「昨秋の政府によるカーボンニュートラル宣言以降、全国の製造業のお客さまからCO2回収設備に対する問い合わせは多いですね」。三菱化工機の水素・エネルギー営業部の石川尚宏部長は話す。その声は化学プラント系を中心とした製造業に加えて、資源系エネルギー企業にも納入実績を持つことから、エネルギー会社からの問い合わせも多いそうだ。

CO2回収設備に対しては、要素技術としてPSA(圧力変動吸着)装置、分離膜、アミンを吸収液とした回収設備に取り組んできた実績がある。そうした中、顧客ニーズ、条件に合わせ最適な提案が出来るよう各技術のブラッシュアップを進めている状況である。

CO2の回収か再利用か 業界連携支える政策議論を

一方、吸着後のCO2処理が、業界の悩みの種だ。CN宣言が出された以上、そのCO2を野ざらしにはできない。

貯留か利用・販売か―。CCSのように地中に貯留するのか。あるいはCN時代の取り組みとして相応しい、CO2を原料とした「ケミカルリサイクリング」といったCO2純度を高めた炭酸ガス販売、あるいはLCO2(液体CO2)として販売するなどの手法が考えられる。CCSに加えてリサイクルについても、国による各種実証が始まっている。

「一民間企業だけで取り組めるものではありません。各企業が連携して取り組めるように、今後は国のエネルギー・産業政策としてリサイクルをどのように位置付けるのか、しっかりと議論してもらいたいですね」(石川さん)。

自治体連携深める 下水施設で地産地消

そんな同社では、いま自治体との連携にも取り組んでいる。ターゲットとしているのが下水処理施設における「未利用エネルギー」利用への挑戦だ。例えば福岡市では、下水処理施設で生じた消化ガスから水素を製造し、水素ステーション向けの水素利用に貢献する循環型のエンジニアリングを手掛けている。

また、石川県金沢市では、下水消化ガスからメタンを製造。同社納入の液ガス熱調設備で熱量調整を行った上で既存のパイプラインにガス注入する実証を展開。そのエンジニアリングを、設備納入という形で支えた実績を持っている。いずれの事例も自治体におけるエネルギーの地産地消を支えるシステムである。

昨今、多くの自治体がSDGs宣言を出す中、自治体の設備である下水処理施設を利用した取り組みは、注目に値する。同時に、既存のパイプラインインフラを活用する事例は、今後、都市ガス業界がCNへの取り組みを深めていくためにも、参考にすべき内容だ。

CN時代を支える水素ステーション