【特集2】脱炭素時代へ本格始動 業界一丸となり難題に挑む

2021年11月3日

鍵握るメタネーション技術 大手各社が研究に着手

こうした中、注目されるのがメタネーションだ。東京ガス、大阪ガス、東邦ガスなどが研究に取り組んでおり、メタン合成、大気中のCO2を分離・回収するDAC(Direct Air Capture)の実用化に向け試行錯誤している。

上流でもメタネーション研究が進む。INPEXは10月15日、大阪ガスと共同でメタネーションシステムの実用化を見据えた技術開発事業を開始すると発表した。

この実証は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の後援を受けた事業で、INPEXが操業する長岡鉱場の越路原プラント内に設備を導入。①触媒によるメタネーション反応の挙動把握を目的とした反応シミュレーションの技術開発、②プロセスの基本性能や触媒の長期耐久性などの評価・確立を目的とした大規模メタネーション反応プロセス技術開発、③商用スケールへの大型化、適用性や経済性などの評価を目的とした、反応システムのスケールアップの適用性―を検討する。将来的には海外で生産能力1万N㎥/時クラスの実証を行い、6万N㎥/時での商用化を視野に入れて取り組んでいく構えだ。

産業ガス大手のエア・ウォーターも、酪農家や事業者と共同で家畜のふん尿由来のバイオガスからメタンを抽出して、液化バイオメタン(LBM)に変換、これをLNGの代替燃料として工場で利用する実証実験を北海道で行っている。地域内を循環する新たなCNエネルギーとして注目される。

新たな選択肢「CNL」 制度面の協力が不可欠

メタネーションに代表される画期的な新技術開発が重要なのは言うまでもない。同時に、50年CNを実現するためには、今後10年、20年、30年でどれだけ産業の低炭素化を果たせるかも重要だ。

とはいえ電化一本では、BCP(事業継続計画)などレジリエンスの観点からバランスを欠く上、高温度帯分野はガスでしか対応できない。こうしたニーズに応えるソリューションとして、「CNL」に期待の声が集まっている。

これは、LNGの製造から燃焼に至る過程で発生するCO2を、カーボン・オフセットすることでCN化したLNGのこと。日本においても東京ガスを中心とした15社によって「カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンス」が今年3月に発足し、現在は24社・団体が参加している。

現在、グローバル企業の中にはサプライチェーンで使用する電気を再生可能エネルギーに限るケースが増加しており、自社の電気を再エネのみで賄うRE100企業・団体が増加している。今後、こうした環境経営が一般化し、移動、宿泊、会議など、製造工程外の企業活動も含むサプライチェーンのCO2排出を避ける動きが活発化すれば、SDGsの観点からもCN都市ガスの需要が高まる可能性もある。

しかし、温対法や省エネ法といった現行の法制度では、CNLのガスを導入しても、CO2排出削減に資すると認められていない。政策上の恩恵がないのが現状で、政策を総動員して50年CNを実現する上でも、法改正は必須だ。

脱炭素化大波は、LNGの導入で12Aから13Aに切り替えた「熱量変換」以来の難題といえる。今まさに、業界各社が知恵を絞り出し、難題に挑もうとしている。

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