【特集2】天然ガスシフトと再エネ開発を両立 グループ一丸でCN実現に挑む

2021年11月3日

【広島ガス・松藤研介社長】

―産業全体で、CN実現に向けた経営が求められ始めています。CNをどう捉えていますか。

松藤 当社グループでは、政府のCN宣言以前から地方のエネルギー供給を担う企業として、環境負荷低減に向けた取り組みとエネルギーを可能な限り安価に提供すべく努力を重ねてきました。

 日本ガス協会でも「カーボンニュートラルチャレンジ2050」を公表しており、まさに新たな転換期を迎えています。協会のビジョンは全てのガス事業者の道標になっており、当社も政府目標である13年度比温室効果ガス46%減に向けて、徹底した天然ガスシフトと天然ガスの高度利用で貢献します。大変高い山ではありますが、チャレンジしていきます。

―環境負荷低減に向け、どう事業を展開していきますか。

松藤 これまでバイオマス発電所の建設検討など再生可能エネルギー獲得に努めてきました。19年には「このまち思い 広島ガスの森」を開設するなど、実質的なCO2吸収による環境貢献に向けて、森林保全・里山再生事業を行っています。昨年10月には「このまち思い SDGs実行宣言」を策定して、今年4月からは社内に環境・社会貢献部を新設しました。「環境・社会性」と「経済性」を両立させたサステナブルなESG(環境・社会・統治)関連事業を推進します。

松藤社長

バイオマスを有効活用 小水力復興で地域に貢献

―具体的にどんな内容ですか。

松藤 19年に新規事業戦略室(現イノベーション推進室)を新設して、さまざまな事業に取り組んでいます。

 中でも海田バイオマス混焼発電事業や里山再生事業、小水力発電事業は、ガス事業以外の事業分野での取り組みであり、環境負荷低減および収益力向上につながる事業です。SDGsの達成にも幅広く貢献できると考えます。

―海田バイオマス混焼発電事業はどんな取り組みですか。

松藤 海田発電所は中国電力とともに今年4月から操業する日本最大級のバイオマス混焼発電所で、当社グループにとってCNに向けた大きな強みです。現在、石炭の混焼率は20%と計画値から既に5%低減させており、今後もさらなる石炭混焼率の低下を目指し、CNに貢献したいと考えています。また同発電所の燃料として、広島県内の未利用木材などを使用しています。

 里山再生事業では、近隣の森林組合と協力しながら、成熟した木の伐採と並行して植林などを行うことで、実質的なCO2吸収を図ります。

―小水力発電事業はどんな取り組みですか。

松藤 当社は今年6月に、志和堀発電所(出力95 kW)の営業運転を開始しました。いわゆる小水力発電所ですが、エネルギー取扱量の少ない地方ガス会社からすると貴重な電源であり、CNに資する重要な設備です。まずはこの電力に由来する環境価値を当社事業所で活用することにより、自社の脱炭素化に役立てる計画です。

 また広島県内にはさまざまな理由で稼働できない小水力が複数あります。地域に貢献すべく、地元と連携して再生活用できないか検討しています。

天然ガスシフトでCO2低減 一丸となって未来を拓く

―CN実現に向け、どのように事業展開を行っていきますか。

松藤 CN社会実現に至る移行期は、天然ガス・LPガスシフトや高効率利用などを中心に、当社・お客さま先双方で累積CO2排出量の低減を着実に進めます。また前述の事業に加え、将来的にはカーボンニュートラルメタンや水素などの次世代エネルギーの利用による「ガス自体の脱炭素化」に挑戦していく考えです。

―今後の意気込みを。

松藤 当社グループは一丸となってCN実現へ果敢に取り組みたいと考えています。これは新たなチャレンジであり、従来とは違う思考・発想が必要です。  私自身もワクワクした気持ちを持ち続け、未来を切り拓いていきたいですね。

里山再生事業にも取り組む