埋設物の地震リスクを数値化 ガス・通信・水道にも適用可能

2021年11月9日

【東電設計】

 発電所、都市ガス導管網、製油所といった生活を支える各種エネルギーインフラには、取水管や導水路、導管など、地下にはさまざまな埋設物が設けられている。

当然のことながら、これら埋設物は経年が進めば改修しなければならない。事業者は限られた予算で効率よく設備改修を行うために、優先順位をどうやって決めるのか頭を悩ませている。

優先順位を決める上で、大きな判断基準になるのが、災害時に対象物がどれだけの損傷が受けるのかを表すPML(予想最大損失率)という概念だ。

PMLとは、災害が発生した際に、対象となる建築物がどれだけの損傷が発生するのかを確率論的に数値化した指標。これまでビルや発電所などでは建物ごとにPMLを算出して建物のリスク評価をしてきたが、地中で広範囲に張り巡らされた埋設物のリスク評価の算出は難しかったという。

そこで東電設計は、地震発生時の埋設物で生じる損傷リスクを数値化するサービスを、東京電力ホールディングスの委託を受けて開発した。サービスでは埋設物を1〜3m程度に区分けして各部位のPMLを算出、さらにその総和を求めることで埋設物全体の地震リスクを評価する。

東電設計のサービスは埋設物の地震リスクを数値化する

部位ごとのリスクを数値化 ガス・水道・通信にも適用

サービスを利用することで、設備全体のPML値を比較し、被害リスクを数値化することができるようになる。つまり設備が複数ある場合、各設備がどれだけのリスクを抱えているのかを具体化することで、どれを優先して更新するのか判断材料として役に立つ。

また、埋設物を1〜3m程度に区分けしてPMLを算出することから、埋設物全体の地震リスクに加え、部位ごとの地震リスクも数値化する。そのため修繕工事計画を立案する際に、特にリスクが高い部位から優先的に工事を進めることも可能になる。

土木本部技術開発部の栗田哲史氏は「地中には電力、石油、ガスなどエネルギー業界に留まらず、水道、通信などさまざまな業種の埋設物がある。今後、インフラの経年はどの業界でも大きな問題となるため、設備更新の際に本手法を多くの事業者に使ってもらいたい」と話す。今後は地震に伴う機械の損傷や、津波や土石流など広域災害も踏まえたリスク評価手法の開発も進めたい考えだ。

設備更新はインフラを運用する事業者にとって離れられない課題。東電設計のサービスはこの問題を解消するツールになりそうだ。