【コラム/11月15日】第49回総選挙雑感

2021年11月15日

福島 伸享/衆議院議員

 10月31日投開票で行われた第49回衆議院議員選挙は、自公の与党が絶対安定多数の議席を取り、岸田政権が政権基盤を強化して継続する結果となった。私もこの選挙に無所属で立候補をし、比例復活の道を捨てた背水の陣で戦い、何とか3期目の国会に返り咲くことができた。私は、今回の選挙戦では「党より人物」をキャッチフレーズとして掲げ、コロナ禍の下での選挙であるため屋内での集会を一切行わず、夜間の寒風の中屋外で1時間かけて車載の大型モニターに図表を映し出しながら、平成30年間の日本の停滞を示し、この間の政治の意志や決断の不在、政治劣化を論じてきた。何党の政策がどうのという以前の天下国家を、あえて論じ続けてきたつもりだ。

 2ヶ月前に私は、「幸か不幸か、エネルギー政策が政局の争点となった」と題したコラムを掲載したが、今回の総選挙は「幸か不幸か、エネルギー政策が政局の争点と」ならなかった(・・・・・)。一つには、岸田首相と河野太郎氏らが争った自民党総裁選に比べて、<自公政権>対<立憲民主党を筆頭とする野党>の今回の構図は政権交代のリアリティがなく、選挙結果によって政策が大きく変わる兆しがなかったことによるものだろう。また、東海第二原発を抱え、世論調査をすると圧倒的多数が再稼働に反対する私の地元でも、単にスローガンとして唱える「原発ゼロ!」にはもはや多くの有権者は反応しなくなっており、むしろ特定の政治勢力のトレードマークとして忌避すらされている。

 では、センセーショナルなスローガンに振り回されなかった今回の衆院選が「幸か」といえば、そうではないだろう。自民党の公約では「安全が確認された原子力発電所の再稼働や自動車の電動化の推進、蓄電池、水素、SMR(小型モジュール炉)の地下立地、合成燃料等のカーボンリサイクル技術など、クリーン・エネルギーへの投資を積極的に後押しします」とされているが、民間が投資を可能とする環境や制度を整えることこそ政治の役割だ。「後押し」ではなく、政治が先頭になってリスクを低減する環境を整備したり、国と民間の役割分担を確定したり、不確定要素を少なくするための予見可能な制度を構築するなどの「行動」が必要なのである。たとえば、もんじゅが廃炉になる中で、核燃料サイクル路線が今後どのようなものになり、20年後、30年後の原子力産業はどのような姿になっているのか、原子力政策の再構築はほとんど手を付けられていない。これでは、民間企業が原子力分野に投資をすることなどは、難しいだろう。

 残念ながら、これまでの安倍政権・菅政権の9年間には、そのような具体的な「行動」が見られないまま、いたずらに時間を費やしてきた。政治の現場でも、「原発ゼロ」や「カーボン・ニュートラル」といったキャッチフレーズばかりが踊り、目先の具体的な経済活動を促すような政策論議は疎かになっているように感じる。私は、無所属で国会に上がってきた非自民系の5人(吉良州司、北神圭朗、緒方林太郎、仁木博文)と共に新たに「有志の会」という会派を組んだ。いずれも激戦を政党や大きな団体の支援を受けずに勝ち上がり、官庁や商社などでの現場経験のある政策通の猛者ばかりだ。キャッチフレーズやイデオロギーにとらわれない、現実的でしかし本質を突いた政策議論を国会で行うグループでありたいと思っている。与党にとって手ごわい存在となろう。ぜひご注目をいただけると幸いだ。

【プロフィール】東京大学農学部卒。通商産業省(現経産省)入省。調査統計、橋本内閣での行政改革、電力・ガス・原子力政策、バイオ産業政策などに携わり、小泉内閣の内閣官房で構造改革特区の実現を果たす。2021年10月の衆院選で当選(3期目)