佐渡島における再エネ導入拡大へ 最適な需給制御の実現を目指す

2021年12月9日

【東北電力ネットワーク】

2050年カーボンニュートラルの実現に向け、電力ネットワークの高度化は不可欠だ。 電力系統が独立する佐渡島において、最適な需給制御の実現に向けた取り組みが始まっている。

 新潟県の佐渡島は、東北電力ネットワークの供給区域であり、同社が発電・送配電・販売までを一貫して行っている。江戸時代初期には徳川幕府が金山開発を進め、金の産出量が世界最大級を誇った。現在は、佐渡鉱山の遺跡群としてユネスコの世界文化遺産登録を目指すなど「歴史と文化の島」として知られている。また、東京23区の1・5倍ほどのこの島は、特別天然記念物トキの生息地としても有名であり、多種多様で恵まれた自然環境を有している。

佐渡金銀山は世界文化遺産登録を目指している
提供:佐渡観光PHOTO

2019年2月、新潟県は東北電力と包括連携協定を締結するとともに、再生可能エネルギーの導入拡大により、地域経済の活性化や防災力の強化、豊かな自然環境の維持を図り、持続可能な循環型社会の実現を目的とした「新潟県自然エネルギーの島構想」の策定に向け検討を開始した。現在、佐渡島での取り組みの具体化を進めている。

佐渡島は、本土と電力系統が接続されておらず、電力需要も島内に限定されていることから、天候により出力が変動する再エネが大量に接続された場合、電気の使用量と発電量のバランスが保てなくなり、電力の安定供給に影響を与える懸念がある。こうした背景を踏まえ、東北電力ネットワークは、「新潟県自然エネルギーの島構想」の先導的プロジェクトとして、再エネや蓄電池、内燃力発電、エネルギーマネジメントシステム(EMS)などを組み合わせた最適な需給制御の実現に向けた取り組みを進める。佐渡島での再エネのさらなる導入拡大を目指している。

発電出力の調整を一元管理 EMSを新規設置

同社はこの取り組みを進めるにあたり、太陽光発電、蓄電池システム、EMSを佐渡島に新設する。

佐渡市栗野江地区に出力規模1500kWの太陽光発電を、両津火力発電所構内には容量5000kW時の蓄電池を設置する計画だ。

佐渡島での最適な需給制御に係る取り組みのイメージ

取り組みの肝となるのがEMS。EMSは島内の電力使用量と再エネの発電量を予測する。さらに、蓄電池の充放電と内燃力発電の出力調整などを一元的に管理・制御して、再エネの出力変動による電力系統への影響を緩和。安定供給を維持する。再エネを最大限活用した経済的な需給制御を実現する。

具体的には、佐渡電力センターにEMS親局を設置し、制御対象装置への指令値などを演算・送信する。既設の内燃力発電に加え、新設する太陽光発電や蓄電池側にはEMS子局を設置する。さらに、需要家と協力し、蓄電池やEVなどの需要側設備を制御の対象とすることも検討していく。

太陽光発電、蓄電池システム、EMSの着工は22年度、運転開始は24年度を目指している。

2050年に向けて 安定供給と脱炭素化を両立

東北電力グループでは今年3月「東北電力グループ〝カーボンニュートラルチャレンジ2050〟」を掲げ、持続可能な社会の実現に向けて、カーボンニュートラル(CN)に積極的に挑戦する。

同社も送配電事業という側面から、電力ネットワークの高度化を通じて、安定供給の維持と電源の脱炭素化に向けた環境整備などに取り組む。

企画部設備計画グループの瀬谷雅俊副長は、「再エネの導入拡大や分散型電源の普及拡大に対応するための効率的な設備形成に加え、蓄電池・P2G(Power to Gas)を活用した需給変動抑制対策などの技術も駆使し、CNの実現に向けて最適なネットワークとなるよう、検討や設備形成を進めている」と現状を話す。

その上で、「今回の佐渡島における需給最適制御は、『足元の再エネ導入拡大時に必要となる需給制御』や『将来の再エネの最大限活用に向けた電源計画の検討』の知見の蓄積にも貢献する。また、この取り組みを通じ、分散グリッドの運用に関わる課題の分析と技術開発を進め、本土における分散グリッドなどへの応用についても検討していく」と取り組みの意義を語る。

日本が排出する温室効果ガスのうち約9割がCO2であり、CO2の排出量の約4割が電力部門。それだけに、CN実現に向けた電力会社の取り組みは注目されている。

佐渡島での取り組みをステップに、電力の安定供給と再エネ導入拡大の両立など、CNの実現に向けたさらなる挑戦が始まっている。

プロジェクトの概要について説明する瀬谷副長