脱炭素社会実現への鍵 水素エネルギーの可能性を討論

2021年12月11日

【エネオス】

行政、学識者、民間企業の関係者らが未来のエネルギーの在り方について討論する「新時代のエネルギーを考えるシンポジウム」が、11月5日に東京都内で開催された。26回目を迎える今回のテーマは、「脱炭素社会の未来像 カギを握る〝水素エネルギー〟」だ。

昨年10月に政府が「2050年カーボンニュートラル」の方針を掲げたことが、脱炭素化の流れを一気に後押し。民間企業や研究機関などが、水素をはじめ、脱炭素社会を実現するための革新的な技術開発や実証などの取り組みを積極的に進めている。 主催者としてあいさつした大田勝幸実行委員長(ENEOS社長)は、脱炭素のまちづくりに欠かせない水素の重要性を強調。「既に水素を活用した実証が進められているが、真の社会実装に向け社会全体で将来のエネルギーの在り方に対する理解を深め、水素エネルギーの役割や可能性について議論を深め、課題解決とイノベーションに取り組まなければならない」と述べた。

可能性と課題が浮き彫り 識者6人が意見交わす

パネルディスカッションには、佐々木一成九州大学副学長、高村ゆかり東京大学教授、保坂伸資源エネルギー庁長官、前田昌彦トヨタ自動車執行役員ら6人が登壇。脱炭素化が進んだ未来の社会像や、水素の可能性や社会実装を進める上での課題などについて意見を交わした。

水素をテーマに活発な意見が交わされた

水素は、太陽光や風力といった再生可能エネルギーや、化石燃料などさまざまな資源から製造できるエネルギー源であると同時に、運搬や貯蔵が可能でキャリアとしての活用も期待されている。佐々木氏は、「CO2を排出せずに、今まで通りエネルギーを使い快適な社会を維持することができる。地域・企業がエネルギー源を選択できるため、汎用性も高い」と、そのポテンシャルを語った。

一方、社会実装をするためには、イノベーションのみならず消費者や企業の理解や行動変容も欠かせない。これについて前田氏は、「普及させられるかは、利用者側の選択にかかっている。多くの選択肢を用意し、反応を確認しながら進めていく必要がある」と述べ、高村氏は、「CO2の排出に価格を付けるなど、排出しないことへの制度的な価値付けが求められる」とした。

保坂氏は、「脱炭素はリスクでありチャンスでもあるが、避けて通ることはできない。今後、どういう社会になっていくかまだ明らかではない面もあるが、CO2を排出しない、または排出したとしてもマイナスにする技術の確立も含めて、トータルで考えていく必要がある」と、複合的な取り組みで脱炭素社会を目指していく姿勢を示した。