【特集2 システム機器編】通信技術で安全性を向上 収集データの活用進む

2021年12月2日

スマート保安に欠かせないのがエネルギー設備を管理する機器の高度化だ。LTEやBluetoothが点検データや警告を送信し安全性向上に寄与する。

【東洋計器】

「IoT―R」端末でデジタル化 収集データで新サービス開発

ガスの使用量を時間帯別、用途別に計測する分計機能を搭載したマイコンメーターとIoTシステム「IoT―R」を組み合わせた東洋計器のソリューションが、シェアを伸ばし続けている。

「IoT―R」は、主にLTE回線で通信を行うIoT端末。携帯電話と同じ回線を使うため北海道から沖縄、離島に至る全国各地でも利用できる。検針員が訪問しにくい過疎地にあるLPガスや水道などの各種メーターや、太陽光発電所のパワーコンディショナー、灯油タンクの油圧センサーなどと接続することで、これら機器の稼働状況を遠隔からでも監視可能だ。

さらに、分計機能により、1台のメーターで日中や夜間、平日・休日、風呂などで大量のガスを短時間利用した、暖房などで少量のガスを長時間利用した―など、時間帯別、日別、利用用途別に検針できる機種をラインアップ。検針業務の省力化や、生活者のライフスタイルに合わせた料金メニュー設定、ガス機器の劣化予測など、設備の保安力向上と、競争力強化を実現する。

またメーターから得たデータを活用して、配送ルートの自動検索や容器残量の見える化などを行う「配送Naviアプリ」、ガス機器を利用し始めた時刻を知らせることで家族の安否を知らせる「高齢者元気情報」、ガスの明細送付や電子決済をアプリ上で行える「ガスるっく」など、さまざまなサービスを提供している。

設備を高度化する「IoT-R」

導入件数は150万台 データ分析で新領域へ

今年11月時点でのIoT―Rの導入件数は150万台に上り、データセキュリティーの国際規格ISMSを取得した「東洋計器マルチセンター」にさまざまなデータが集まっている。そのため、昨年9月にはIoT―Rの接続台数が300万台にまで増加しても対応できるよう設備を増強した。

DX化による保安の高度化について、土田泰秀会長は「得られたデータをAIなどで類型化できれば、販売促進につながる新サービスも開発できる。また他業種と連携して分析することで、新しいビジネスを生み出せるのではないか」と期待を寄せる。

IoT化が叫ばれる30年以上前からデジタルと向き合ってきた東洋計器。これまで積み上げてきた技術力と創造力を生かして、事業者の業務革新を支えていく。

増強した「東洋計器マルチセンター」

矢崎エナジーシステム

LPガスバルク運用を支える IoT機能付き蒸発器を開発

矢崎エナジーシステムは、IoT機能を搭載したLPガスバルク向けの蒸発器「温水循環式アロライザーVP―S50W/100W」の2機種を開発した。

一般的に、バルクに貯蔵されたLPガスは気化してから使用する。一度に大量のLPガスを消費する場合は気化が追い付かず、バルク内の気圧が落ちて供給が安定しなくなることがある。そのためバルクには蒸発器と呼ばれる気化装置を設置して気化量を調整している。

蒸発器は主に電気やガスの熱で気化する方式や、温水を循環させて気化する方式がある。今回同社が開発したのは温水循環式の蒸発器で、「VP―S50W」は1時間当たりのガス発生能力が50㎏、「VP―S100W」は同100㎏の中小型モデルで、安定供給と遠隔監視の両立をコンセプトに据えて開発した。

遠隔監視機能を持つ「VP-S50W/S100W」

業界初のIoT機能搭載 稼働状況をパソコンで閲覧

安定供給については、バルク内の圧力に応じて自然気化と温水循環による気化を切り替える、気液切り替え方式を採用。熱源機の負荷を軽減することで、ランニングコストやCO2排出量を削減する。

遠隔監視は、各部に取り付けられたセンサーで、設備の稼働状況をセンシングする機能を搭載した。センサーは熱源機と蒸発器間の流量、温度や、バルク内の圧力と液面変化を計測している。各種データは通信モジュールでクラウドに送信され、インターネットブラウザで閲覧可能。異常を検知した時にメールを送るアラーム機能も搭載しているため、突然発生したトラブルにも迅速に対処できる。

これまで設備にトラブルが発生した際は、メンテナンス事業者が現地に行き、そこで初めてどの設備が故障しているのかが判明していた。同機を導入することで、修理やメンテナンスにかかる時間のロスを減らせるメリットがある。

また、高圧ガス保安協会の「液化石油ガスバルク供給用附属機器型式認定」を取得したことにより消費設備となるため、高圧ガスの製造設備に係る技術上の基準を受けないのも特長といえる。筐体の設計を見直したことでサイズの縮小に成功。狭いスペースへの導入もしやすくなっている。

今後、こうしたIoT機能で多くのデータを収集できれば、製品の性能向上や、より高度なサービスの提供にもつながっていく。災害に強い分散型エネルギーとして定評のあるLPガス。そんな特長をさらに支えていく重要な機器になりそうだ。

【新コスモス電機】

ガス検知器のスタンダード スマート保安で普及加速

新コスモス電機のガス検知器製品群がスマート保安を背景に注目を集めている。近年、日本国内のプラントや工場は、設備の老朽化、保安人材の高齢化などの課題が顕在化している。

これに伴い、経済産業省はAI、センサー、IoTなどの活用により、データ分析を通じた自己予兆把握など、保安の高度化を図ることを推進している。2019年4月には、石油・化学プラント内での電子機器、ドローンなどの活用範囲を拡大するためのガイドラインを公表。「自主行動計画」の参考となるガイドラインを策定した。

ポケット型可燃性ガス検知器「XA-380s」

ガス検知器携行で 防爆エリアを半減

具体的には、現状の防爆エリアとなっている第二類危険箇所をガイドラインに基づきリスクを評価し、新たな非危険箇所を明確にした上で、自主行動計画の中で携帯用ガス検知器を携行するなど事前安全評価と管理を行うことで、スマートフォンやタブレットなどの非防爆機器の利用エリアを拡大することができる。

この携行するガス検知器を販売する新コスモス電機インダストリ営業本部の川口勝也副本部長は「ガイドラインに則った申請によって、防爆エリアの範囲を半減できた事業者もいると聞きます」と話す。

新コスモス電機のポケット型可燃性ガス検知器「XA―380s」は、重さが63g軽量で作業員が身につけても気にせず業務に当たることが可能、アラーム、ランプ、バイブレーションによってガス漏れを知らせ、ガス警報の履歴を最大30件まで表示できる。

乾電池仕様なら単4形アルカリ乾電池1本で約34時間、充電池仕様なら約40時間と、長時間の連続使用ができるのが特長だ。また、保護等級IP54相当の防沫・防塵構造、防爆基準の厳しい水素防爆に対応する。

濃度が数値計測できる検知器では、スタンダード機として長年現場で使われている「XP―30

00II」シリーズがある。低濃度から爆発危険濃度まで1台で検知可能。最新機種は、Bluetooth機能を搭載しておりスマホとも連動し、専用アプリからメールで通知することができる。さらに、32種類のガス種への読み替えが可能だ。

オープンパス方式ガス検知器「IR5500」はプラントと一般の敷地など境界線に赤外線投光部と受光部を設置。その間に存在する炭化水素ガスの濃度を、赤外線の吸収波長と透過率を見ることで検知する。最長150mの2点間のガスを3秒で検知。

川口副本部長は「高圧ガス設備扱うプラントでは、老朽化や腐食による漏えいが思わぬ箇所から発生しています。プラントと事務所の境界線などに設置することで事故を未然に防ぐことができます」と同製品を組み合わせることでさらなる高度化につがなることを強調する。

このほか、水素向けに防爆型紫外線・赤外線式火炎検知器「FL500―H2」を発売中。水素の見えない紫外線の炎を検知。水素ステーション(ST)のディスペンサーや蓄圧器など、ST1カ所当たり3、4台は設置されている。

水素やアンモニア、メタネーションなど、新たなエネルギーが注目されている。新コスモス電機ではこれらの製品を核にしながら、次世代エネルギー技術への対応にも注力していく構えだ。