【特集2】FITに頼らない事業運営を計画 将来的には自社電源の活用も

2022年1月3日

【インタビュー:髙崎敏宏/テス・エンジニアリング社長】

テス・エンジニアリングは、エネルギー設備の設置や運用のノウハウを生かし太陽光発電事業に取り組む。太陽光事業の戦略や、再エネ事業を進める上での秘訣を髙崎敏宏社長に聞いた。

―太陽光発電を手掛け始めたきっかけについて聞かせてください。

髙崎 当社は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が始まる前からもコージェネと組み合わせた太陽光複合コージェネや、補助金を活用した自家消費太陽光のEPC(設計・調達・建設)を行っていました。

 制度開始後は、エンジニアリング事業のノウハウが生かせるビジネスモデルだと判断し、顧客に向けた太陽光発電のEPCを本格的に手掛け始めました。建設後の設備運用においても、遠隔監視システムを活用したO&Mを行うなど、太陽光発電に係わるビジネス全てを内製化してワンストップでサービスを提供しています。

 当社は、フロービジネスである「エンジニアリング事業」とストックビジネスである「エネルギーサプライ事業」の二つの事業を中心に展開しています。前者はガスコージェネを中心としたエネルギー設備の建設で、景気や原油高など時流に左右されます。太陽光発電もFITを背景に発電所の建設ばかり手掛けていると、買い取り価格が安くなったときに仕事が減少する恐れを懸念していました。

 そこで、定期的な収入が見込めるストックビジネスを拡大するため、2015年ごろからは太陽光発電を自社で保有し、売電収入を得る事業を開始しました。現在では自社発電所の件数も増加し、、経営基盤の強化に寄与しています。FIT期間終了後も、再エネ電源の需要は高まっていくと考えているため、それらを顧客向けの再エネ電源として活用していく予定です。今後は自社で建設するだけでなく、稼働済み太陽光発電所の買い取りやオンサイトPPAで発電所件数をさらに確保していく方針です。

オンサイトPPAに注力 工場の屋根などに設置

―太陽光発電では、オンサイトPPA(電力販売契約)にも注力しています。

髙崎 当社の顧客ターゲットは産業部門のエネルギーを多く消費する工場や事業所が中心です。エネルギー管理指定工場やそれに準ずる規模の施設などです。そういったお客さまには工場などの屋根やカーポートなどに太陽光発電を設置してもらうよう積極展開しています。当社の経営基盤を生かしながら、中長期的に売電収入が得られるビジネスモデルです。

 また、PPAの提案をきっかけに、ガスコージェネ導入やユーティリティの更新、LNGへの燃料転換などといった、低炭素・脱炭素化に対するソリューションも併せて提案しています。

 21年春、オンサイトPPAでは、THKリズムの九州と浜松の二つの事業所の屋根に太陽光を設置しました。コージェネで長いお付き合いがあり、太陽光についても導入してもらうことができた事例です。そのほか、脱炭素化に向けて、さまざまな産業のサプライチェーンでも低炭素、脱炭素化への取り組みニーズが増加していると感じます。そうしたニーズを抱えている企業に提案していきたいと考えています。

―貴社の太陽光発電事業における強みはEPCの品質などになるのでしょうか。

髙崎 当社はエネルギー設備を建設した後、O&Mも手掛けています。建設したものがいい加減だと、オペレーションに影響し、自分たちが苦しくなるだけです。コージェネで培ったエネルギー設備の建設や運用に関わるノウハウを転用し、お客さまに信頼いただける品質を心掛けています。

―太陽光発電所の開発・運営で気をつけていることは。

髙崎 各種法令の遵守はもちろん、地元の皆さんとコミュニケーションをとりながら進めていくことです。当社は建設する立場であり、事業者でもあるので、地元からの意見に耳を傾けるようにしています。例えば、雑草対策として、除草剤一つにしても、使ってほしくない地域もあれば、使ってほしいと要望を受ける地域があるなど、約束事が異なります。隣接する地域で農産物を作っている地域と作っていない地域では考え方も変わってきます。このように地域との対話を行いながら開発・運営を行うことで、地域と共存しながら持続可能な事業を行っていかなければならないと考えています。

バイオマス発電所が稼働 新たな燃料の開発進める

―ほかの再エネで取り組んでいるものはありますか。

髙崎 バイオマス燃料の開発に取り組んでいます。パームオイルを絞ったあとのヤシ種殻(PKS)はFITのバイオマス燃料として認められていますが、ヤシ房から果実を取り出した後に残る空果房(EFB)は認められていません。これをペレット化して利用できないか、インドネシアで開発を進めています。自社で行うバイオマス発電についても太陽光発電に次いで注力しています。現在、当社グループが事業に関わっている発電所は三重エネウッド松阪木質バイオマス発電所(5800kW)の1カ所ですが、今後は熊本県で2000kW、佐賀県で4万6000kWの発電所が稼働する予定です。

茨城牛久メガソーラー発電所(2万9400kW)

―再エネ普及における課題は何だとお考えですか。

髙崎 系統の空き容量が無いことから、特高・高圧の発電所を系統連系できないことが課題だと考えています。以前、バイオマス発電所を建設できないか調査したら、180億円という高額な連系工事負担金を提示されました。これは事業ができないことと同義です。

 当社は工場や事業所内のオンサイト発電にも注力していますが、ある程度の規模の発電所を建設するには余剰電力を逆潮流させる必要があることから、系統空き容量の確保は必須です。こういった課題が改善されることで、さらなる再エネ拡大が期待できるのではないかと考えています。

たかさき・としひろ 大阪府出身。1995年同志社大学卒、テス・エンジニアリング入社。2017年7月社長就任。